ソーシャルメディア四半世紀

ソーシャルメディア、四半世紀の分析から気付く「3つの事実」 東京経済大学教授 佐々木裕一

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 しかしながら筆者は現状でのスマートフォンとアプリの組み合わせのうち、SNSとメッセージングアプリで展開されるコミュニケーションには、むしろ懸念すべき点が少なくないという立場をとる。というのも、良質な「情報」は、SNS以外のサービスにもあるという見識を持った上で、「コミュニケーション」が持つ道具的側面と、それ自体が目的化するコンサマトリーな側面のバランスをとりながら、スマートフォンとSNSアプリという組み合わせと巧みに付き合えているのは限られた人たちであると考えているからだ。つまり多くの利用者は、この情報環境によって、その行為と中身をコントロールされすぎているという見解である。

 この指摘とともに思い出して欲しいのが、固定電話による音声通話とスマートフォンでのSNS/テキストメッセージングにおけるサービス事業者の収益モデルの違いである。つまり利用者が通話料を支払う前者に対し、後者では一見それが無料であり、その背後には当然ながら広告という収益モデルが控えているということである。利用者に従量制で代金がかかることは、レッシグの言う「市場」による規制が働いていたということであり、このことによってコミュニケーションの回数もしくは総量は制限されていた面がある。ところが電話会社が提供する音声通話は、無料のテキストのSNSあるいはメッセージングアプリによって代替されていった。

 そのことによって、会話(Conversation)のもともとの意味である「2人あるいは少人数で、ともに向き合って話しあう」というもの、あるいは「ともに分かち合う」という原義を持つコミュニケーションのいずれともずいぶんと異質なものがオンラインでは展開されるようになった。それはときに中身が軽視されがちな、あるいはすぐに流れ去ってしまうものである。

 かくして、「ユーザーサイト」の日本における20余年の歴史を記述することで明らかにしたことは、次のようにまとめることができるだろう。

 すなわち、(1)常に下部構造として機能した広告収益モデルがあり、(2)利用者の投稿するコンテンツはしだいに商業活動に接近し、(3)投稿されるテキストは「情報」から「コミュニケーション」へ、さらにはコンサマトリーなものへとその重心を移していった。特に(3)の変化は、パソコンというデバイスにおいても徐々に進行していたものが、スマートフォン+アプリという情報環境へと移行し、SNSおよびメッセージングアプリがプラットフォームとして活発に利用されることによって急速に起きた、と。

佐々木裕一著『ソーシャルメディア四半世紀』(日本経済新聞出版社、2018年)「第15章 ユーザーコンテンツのこれまで、これから」から
佐々木 裕一(ささき・ゆういち)
1968年生まれ。1992年一橋大学社会学部卒業。学部時代にフランス高等商業学院 (HEC) に給費留学。2009年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。電通での消費財マーケティング・コミュニケーション戦略立案、アーサー・D・リトル・ジャパンとNTTデータ経営研究所での製造業・情報サービス業の全社戦略策定、スタートアップ企業への投資などの業務を経験し、大学教員に。2011年~2013年カリフォルニア大学サンディエゴ校訪問研究員。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。


キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、フィンテック、AI、ICT

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