現場発で考える新しい働き方

働き方が多様になる中で、労働者派遣はどう位置づけられるか 弁護士 丸尾拓養氏

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労働者派遣を振り返る

 約3年前の2015年9月30日に改正労働者派遣法が施行されました。これにより労働者派遣法に関する考え方が大きく変わりました。改正前は労働者派遣をネガティブにとらえていたのですが、改正により労働者派遣をポジティブにもとらえたのです。

 1986年7月に労働者派遣法が施行されました。それ以前には労働者派遣はなかったのです。当初は事務用機器操作、ファイリングなどの13業務が解禁され、1996年改正でアナウンサー、書籍等の制作・編集などの業務が加わって26業務となりました。労働者派遣は原則禁止され、一部業務に限って解禁されました。これは、労働者派遣が正規雇用者などの雇用の場を奪うものとして位置づけられ(「常用代替の防止」)、このおそれの少ない専門的知識や特別の雇用管理を必要とする業務だけが労働者派遣の対象業務となりました。

 その後、1999年改正では原則と例外が逆転して、労働者派遣は原則自由であり、例外として警備業務、建設業務などが禁止されることになりました。しかし、26業務以外の業務(「自由化業務」または「一般業務」と呼ばれた)については3年の期間制限が設けられました。この期間制限の趣旨は、3年経過したら正規雇用者などの常用にその雇用の場を戻すというものでした。2004年からは「物の製造」業務についての労働者派遣も解禁されました。

 ここまでは、労働者派遣は常用代替となり得るネガティブなものとされていました。この背景には、労働者派遣は「非正規」の一つであるという見方が強かったのでしょう。派遣労働者が正規雇用者に転じることが望まれました。

 しかし、2015年9月30日に施行された法改正では、このような考え方が大きく転じました。労働者派遣という働き方を積極的に肯定します。このうえで、労働条件の不合理な相違を禁止します。労働者派遣という働き方を「非正規」とみる考え方は後退したのでしょう。一方で、正規雇用にも変容を迫ったのが、その後の「働き方改革」です。正規と非正規という二極で考えるのではなく、多様な働き方の「器」を労働者の各々が選択する時代に入っていきます。

 この現行の労働者派遣法は、派遣労働者が派遣元(派遣会社)で有期雇用されているか、無期雇用されているかで規制が異なります。派遣元で無期雇用されている場合、特段の規制はありません。これに対し、派遣元で有期雇用されている場合、当該派遣労働者、すなわち同一派遣労働者を同一の組織単位(例:課、グループ)で3年を超えて受け入れることはできません(派遣労働者の「個人単位」の期間制限)。同一の組織単位では同一の派遣労働者の受け入れは3年以内です。

 もっとも、その後に、同じ会社が同一の派遣労働者を別の組織単位で受け入れることはできます。たとえば、派遣先のA社は派遣労働者であるBさんを、最初の3年は総務課で受け入れ、次の3年は営業課で受け入れることができます。派遣労働者の個人単位での受け入れ期間について同一の組織単位で3年を限度とする趣旨は、指針では「派遣労働者がその組織単位の業務に長期間にわたって従事することによって派遣就業を望まない派遣労働者が派遣就業に固定化されることを防止することにある」と記載されています。派遣労働者のキャリアアップのためなどと説明されることもあります。

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