仕事内容が合わなかったのか、労働環境が不満だったのか、上司や先輩との関係が問題か、それとも給料が…? 若手社員が去る会社の問題は一体どこにあるのでしょうか。なかなか聞くことのできない退職者の本音を、インタビューから探り出し、社員を定着させるための職場づくりについて、人事担当者・経営者の声からヒントを示します。
■第1回:なぜ、御社は若手が辞めるのか~離職につながる12の理由
■第2回:なぜ、御社は若手が辞めるのか~それでも退職願を書かない理由
■第3回:なぜ、御社は若手が辞めるのか~会社と社員のすれ違いとは?
■第4回:なぜ、御社は若手が辞めるのか~実は入社してからでは遅い!
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年々、増している人事部の危機感
人事部サイドのリテンション(定着・引き留め)の課題について見ていきたいと思います。
「従業員を辞めさせない」ための人事部の取り組みは現状、どのようになっているのでしょうか。
企業の人事部門長にアンケートをとった日本生産性本部の調査(2012 「人事部門が抱える課題とその取り組み」に関するアンケート調査結果概要)によると、「最も重要な人事課題」として、「優秀な人材の確保・定着」を挙げる企業は、全体の14.6%で2位。第1位の「次世代幹部候補の育成」(17.3%)に次ぐ、二番目に深刻な課題として多くの人事部に認知されていることがうかがえます。
図表 現在最も重要な人事課題(%)
しかも、人手不足にともなってか、年を追うごとに「優秀な人材の確保・定着」を重要な人事課題として挙げる企業は上昇傾向にあるようです。
人材の確保・定着に関する企業の危機感はますます増すばかりなのに、なぜ、それでも若手社員が辞めてしまうということが起こるのでしょうか。
企業が定着のためにどんな施策をとるかという問題以外にも、リテンションを左右する要因は数多くあります。一企業としてコントロールすることが困難な業界全体の景気動向や転職市場の動向も、転職機会の増減を通してリテンションに密接に関係するのです。
2018年現在で言えば、多くの業界において転職市場は活況を呈しており、20代の人材にとって条件の良い転職先が見つかる可能性が高いから定着が難しい、という要因は見逃せないでしょう。
しかし、それ以外の理由として、会社側の努力やむなく社員が去ってしまうという背景には「社員が会社に求めているもの」と「会社が社員の定着のために行っていること」の埋められない乖離があるのではないでしょうか。
社員と会社の本音はなぜすれ違う?
その乖離は、次のようなデータが物語っています。
少し古いですが、「働き続けるために会社が実施する施策としてどれが有効か」を従業員に尋ねた労働政策研究・研修機構の調査(2007 若年者の離職理由と職場定着に関する調査 JILPT調査シリーズNo.36)があります(3つまでの複数回答)。
それによると、(1)「賃金水準を引き上げる」(42.2%)、(2)「休日をとりやすいようにする」(24.1%)、(3)「本人の希望を活かした配置を行う」(24.0%)、(4)「仕事と家庭の両立支援を充実させる」(19.1%)という結果になりました。
従業員の本音としては、やはり「賃金はどうか」や「休暇が自由にとれるかどうか」「仕事と家庭の両立支援」、そして「希望に沿った配置がされるかどうか」というのが、会社を辞めるかどうかの判断基準として重要だと感じているようです。
また、これらの要素によって、辞意が覆る可能性があることを指します。