なぜ、御社は若手が辞めるのか

なぜ、御社は若手が辞めるのか~それでも退職願を書かない理由 青山学院大学経営学部教授 山本 寛

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辞めた社員との比較から見るリテンションのポイント

 これらのインタビューをもとにすると「会社を辞めなかった」理由として、以下のような要因が挙げられるようです。

A「働きがいがある」→辞めた理由cの裏返し(ケース8)
B「会社の姿勢・方針に共感」→辞めた理由jの裏返し(ケース5)
C「周りに相談する人がいた」→辞めた理由abの裏返し(ケース6、7、8)

 その他、「転職活動が地理的にしづらい」「転職活動が面倒」「給与に不満なし」という理由もありました。

 特に、辞職を選ばなかった理由として、Cの「人間関係の良さ」に言及している人は多く、リテンションの大きなヒントになりそうです。

 ここまで見てきたように、軽重は別として、多くの人が複数の理由で会社を辞めています。インタビューでは生の声を極力拾うようにしましたが、なかにはうまく言語化できないような、空気の影響などもあるでしょう。そこには人それぞれに、多くの迷いや葛藤があったはずです。会社では辞職者が出ると、部署の管理職や先輩に当たる社員などに責任を求めがちですが、実際の退職理由は複雑で「○○だから辞めた」などと決めつけることはできません。また、辞職理由が一要素で決まらない以上、会社側の対処もまた一概にいかないという現実があります。

 最後にリテンションの際、やってはいけないことをお話ししておきましょう。転職経験がある20代~40代女性に聞いたエン・ジャパンの調査(2018 「退職」をテーマとするアンケート)で、「退職時に苦労やトラブルはありましたか?」(複数回答可)と尋ねたところ、81 %が「ある」と回答。1位は「会社・上司からの引き留め」でした。

 会社で退職を告げる時点で、もうすでに気持ちはかたまっていることが想像できます。

 同じ「引き留め」でも、相手の気持ちを考えない強引な引き留めはトラブルの原因になり、会社の将来的にも悪影響を及ぼします。決してプラスの結果にならないことを肝に銘じておく必要があるかと思います。

山本寛著『なぜ、御社は若手が辞めるのか』(日本経済新聞出版社、2018年)「第2章 若手はこうして会社を辞める」から
山本 寛(やまもと・ひろし)
青山学院大学経営学部教授。1957年生まれ。79年早稲田大学政治経済学部卒業。その後、銀行などに勤務、大学院を経て、現職。博士(経営学)。メルボルン大学客員研究員歴任。経営科学文献賞等受賞。『「中だるみ社員」の罠』『自分のキャリアを磨く方法』『昇進の研究[増補改訂版]』『人材定着のマネジメント』『働く人のためのエンプロイアビリティ』など多数の著書がある。研究室ホームページ:http://yamamoto-lab.jp

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修

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