なぜ、御社は若手が辞めるのか

なぜ、御社は若手が辞めるのか~それでも退職願を書かない理由 青山学院大学経営学部教授 山本 寛

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

【ケース7】輸送機器メーカー勤務Iさん(30代男性)

 入社以来、開発業務に携わってきたIさん。

 「辞めない理由として、まず挙げられるのが周りに相談できる人がいること。閉鎖的で悩みを打ち明けられないとか共有できない状況だと思い詰めると思うんですけど、つらい状況でも上司や同僚が話を聞いてくれて力を貸してくれるし、そういう人たちのためにも頑張らなきゃいけないという思いが生まれるので、辞めていないのかなという気がしています。給与的にも必要な対価は得られていると思っているので、特に不満はないですね」

 そもそも今自分が置かれている以外の別の世界・環境を知らないので、次に行きたいところのイメージもないし、現状に満足しているから、あえて知らない方向に飛び込んでいこうとか、強く知りたいとも思わない。

 「知りたかったら、インターネットで調べたり友達に聞いたりすれば情報を集めることは難しくない。でも異動するっていう前提で情報を集めてはいません。相対的に満足している、そういうことですね」

 ただ、Iさんにも「辞めたいな」と思う時はある。主に業務量が自分の処理能力を上回っているような時や、負荷が高くて体調を崩しているような時。ここ1、2年、求められるアウトプットが高くなり、現実と理想とのギャップに悩む機会が増えたそうだ。

 「量をさばくため、質をちょっとあきらめざるを得ない状況になると、達成感が得られなくなってくる。また、一つのことを集中してやれればハッピーなんですけど、そうもいかず、マルチタスクをこなさなきゃならない。業務量を調整し、バランスをとりながら仕事を回していくしかありません。大変は大変です」

 「仕事量の多さ」に不満を感じるものの、人間関係に満足しているという声です。

【ケース8】総合電機メーカー勤務Hさん(30代男性)

 入社以来○○を扱う部署に所属。同僚や若手社員はどんどん辞めていくが、辞めたいと思ったことは一度もない。

 「私が辞めなかった理由は大きく2つあります。1つは自分のやっている仕事に非常にやりがいを感じていること。○○事業とは異なる開発に携わっているため、○○事故後も業務に影響はないばかりか期待がむしろ大きくなっており、やりがいも増えました。経営者に対する不信もありますし、若手がどんどん辞めていく環境に身を置くこと、事業がなくなる環境に身を置くことに対し迷うことはもちろんありますが、それでも今自分がやっている開発・目標には影響ありません」

 昨年夏からHさんはプロジェクトリーダーの立場になり、開発の中心的役割を担っている。開発においてさまざまな采配をふるえるようになり、クライアントからも会社の顔と認識される存在。開発が注目されるのは嬉しく、自分が抜けるわけにはいかないなと思えるようになったという。

 2つ目の理由は、一緒に開発をやっているメンバーとのコミュニケーションが心地良いこと。上司に対する不満ももちろんあるが、プライベートでも非常に仲が良く、仕事以外で飲みに行ったり、土日に顔を合わせても嫌だと思わない。

 「その人たちと一緒にやっていて、離職して彼らを裏切る気にはならなかったという面が大きいですね」

 「会社への不信」を持ち、相次ぐ辞職者を横目で見つつも、「やりがい」や「人間関係」によって、離職の道を選ばなかったケースです。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。