なぜ、御社は若手が辞めるのか

なぜ、御社は若手が辞めるのか~それでも退職願を書かない理由 青山学院大学経営学部教授 山本 寛

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 労働政策研究・研修機構(2007 若年者の離職理由と職場定着に関する調査 JILPT調査シリーズNo.36)によると、転職しなかった理由(複数回答)は「辞めると生活ができないから」が45.1%、「希望の転職先が見つからなかったから」(25.5%)、「職場の人間関係が良好だから」(24.2%)などの順になっていますが、実態はどうなのでしょうか?

 こちらもインタビューによる生の声を紹介しましょう。

【ケース5】エネルギー業界企業勤務Bさん(30代男性)

 新卒で入社。3年ほど現場作業を経験した後、本社で事務系の仕事に携わる。

 「正直な話、この仕事が向いているかどうか悩むことはあっても、じゃあ何がいいかと考えた時、今の職場は他の選択肢よりもベターかなと思っています。エネルギー業界ということで先行きの不安はありますが、『なるようにしかならないのかな』と思っていますし、幸い職場の上司・同僚にも恵まれている。会社に入って12年目になりますが、理不尽な人も時にはいますけれども、総体として『辞めたい』と思うまでのことはありませんでした」

 現場での数年は、集金作業などの地道な仕事を与えられていた。その頃に辞めていった同期も多いという。

 「当社にはそれなりの学歴で優秀な人が集まっています。例えば商社でスケールの大きな仕事に携わっている友人の話を聞くなどして『自分が思い描いていた社会人生活と違う』と感じて辞めていったんだと思います」

 Bさん自身も、すべてが希望通りになっているわけではないが、仕事にはやりがいを感じている。

 「使命感と言うとおこがましいのですが、当社の仕事は社会のためになるものだと思っています。もともと志望したのも社会生活を支える仕事というところに惹かれたからで、辞めようと思わないのはそれが大きいですね」

 周囲には辞職者が多かったものの、自分は辞めなかったという人の声です。会社に対して不安も抱えているものの、今の仕事に働きがいを感じていることがわかります。

【ケース6】医療機器メーカー営業Fさん(26歳女性)

 会社を辞めようと思ったことは複数回あるというFさん。

 1回目は入社してすぐの新人研修後、大阪転勤が決まった時。東京生まれで親元を離れるのはこれが初めてだった。

 「漠然と一人暮らしに憧れもあったのですが、いざ転勤を言われた時『どうしよう』と思って(笑)。東京で働く気でいたし、知らない人ばかりのなかでやっていけるかなと不安でした」

 いざ大阪に行くと、上司や職場の若手のメンバーが気にかけてくれた。また同期が4人おり、勤務地がバラバラだったので「それぞれ頑張っている同期に負けたくない」という気持ちもあり、頑張るうちに少しずつ仕事に慣れていった。

 2回目は大阪で働いて約2年経った頃。東京への異動を打診された。

 「相当悩みました。理由の1つは、やっと営業の仕事に慣れ、面白くなってきたところだったから。『じゃあ来年はこうしようかな』と戦略を立てていた時で、ここでまた仕事や場所を変えてしまうのは……と思ったんです。

 2つ目は、東京での配属も営業職だったこと。大阪でやっていた仕事だからスキルアップになるとは思いましたが、もともとは人事志望。そのため上司に『人事とか内勤の部署空いてないんですか?』って聞いてもらったんですけど、空きがあるのは営業職。じゃあ退職して東京に戻って転職活動しようかとも考えました」

 だが、大阪にいながら東京で転職活動をするのは時間・経費ともに負担が大きい。Fさんはいったん東京に戻って勤務し、人事に空きがあれば人事へ、もしくは営業職になじめなければ転職活動を、と考え東京への異動を決めた。

 「とりあえず、今の会社で営業を頑張ろう」と思ったものの、東京の営業は仕事量が多く、残業も関西勤務時とは比べられないほどに増加。これを続けるのは大丈夫かな、体力的にも精神的にもつらいなあと思い、転職サイトに登録したという。

 「一応業界や職種を登録して。サイトに登録してみたんですけど、転職するイメージがわかなくて。そのうちに見るのが面倒くさくなっちゃった(笑)。結局、『すごく転職したい』というほどでもなかったんでしょうね。人間関係では上司に恵まれているし、周りに相談できる人もいるし、同期に刺激も受けられるし。給料面でも営業職は賞与がもらえるため比較的高い方。そう考えると、少しハードでも頑張ろうかな、という感じですね」

 何回か転職を考え、転職サイトに登録したにもかかわらず、辞職しなかったという人の声です。

 「もともと希望の仕事ではなかった」という職種で働いているにもかかわらず、「周囲の人間関係」や「給与面」でメリットを感じ、前向きに仕事をとらえているようです。

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