仕事内容が合わなかったのか、労働環境が不満だったのか、上司や先輩との関係が問題か、それとも給料が…? 若手社員が去る会社の問題は一体どこにあるのでしょうか。なかなか聞くことのできない退職者の本音を、インタビューから探り出し、社員を定着させるための職場づくりについて、人事担当者・経営者の声からヒントを示します。
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退職には「2つ以上の理由」がある?
「やりたいことができない」、「労働時間や給与などの労働条件が不満」、「会社の将来に不満がある」……実際に転職を経験した方でしたら心あたりがあることと思いますが、実際はこれらの理由のどれか1つによって辞職を決意するということは珍しく、いろいろな理由が複合的に重なり合って「辞めよう」という決断を下すことが多いものです。
「やりたいことができない」「労働条件が良くない」などの不満は、それ単体では離職の決定的理由になるとは限らないものです。
「今の仕事が特にやりたい仕事というわけではないが、給与面で恵まれているので辞めるつもりはない」、あるいは「残業が多かったり労働条件には不満があるが、好きな仕事ができて人間関係も良いので今の会社にいる」などという声を、働いている人から聞くことは珍しくありません。
「退職者が会社を辞める理由は1つではない」ということは、リテンション(定着・引き留め)を考えるにあたって重要なポイントだと思います。
「今の仕事内容に不満がある。もう少し給料が良ければ我慢もできるが、この給料では……」「この業界の未来は暗そうだ。残業も多くてつらい。せめて目の前の仕事が面白ければいいのだが……」など、会社を辞める人は、会社に対するいくつかの不満を抱え、その葛藤のなかで決断を下します。
インタビューから見た若手・中堅の転職事情
では、実際に退職を選んだ人々は、どのように考え、決意をしたのでしょうか。
ここから、転職をした人たちの生の声を紹介し、そのプロセスに迫っていきたいと思います。
【ケース1】専門商社営業Aさん( 27歳男性)※別の専門商社営業から転職
前社は紙を扱う専門商社。もともと「1社にこだわって終身雇用で働く」という考え方がなく、数年でキャリアチェンジを考えていたAさん。
前社入社時の志望理由は海外向けのビジネスだったが、実際は国内の営業で社内の「自己申告制度」を利用しても通らない。また社会の流れとしてペーパーレス化が進むなか、紙を扱うその会社はネガティブな雰囲気になっていた。
「新規の開拓はしていくんですけど、例えば役員クラスの方や自分の現場のトップの会議などで『もう紙はダメだからな』みたいな発言が出てくるんです。志気も下がりますし、給料面でも『頑張っているのに、どうしてこれだけしかもらえないんだ』という不満がありました。
また、端的に言うと右から左に流すっていうような仕事だったので、『それが本当に社会のためになっているのか』『貢献できているのか』という気持ちになりました」
ここから「やりたい仕事ができない」「給与」「上司への不満」などといった複合的な理由がせめぎあっていることがわかります。
転職先に選んだのは、同じく専門商社ながらメーカー寄りで製販一体の営業職です。
「メーカーとしての技術力及び商社としてのフットワークの軽さ・機動力にまず惹かれました。会社の経営方針として『素材には社会の力、社会を変える力がある』と社会貢献を前面に押し出している。また今、私が扱っている素材は、世界的にトップシェアを誇っているので、やりがいもあります」
給料面でも、生活水準を落とさないレベルを確保。現在はデスクワークが中心でやや物足りなさを感じるものの、ワークライフバランスは前よりも良くなった。
「自分にとって転職は正解でした。どこかでまたキャリアチェンジをするつもりですが、今までの経験を活かせればと思っています」
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