石澤卓志の「新・都市論」

「かぼちゃの馬車」騒動、失敗しない不動産投資とは みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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 不動産投資に関するトラブルが多発している。4月から5月にかけて、東京都内を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していた(株)スマートデイズと、シェアハウス販売会社のゴールデンゲイン(株)が、相次いで経営破たんした。投資用マンションの購入者が、家賃保証契約をめぐって管理会社を訴える例も増えている。しかしトラブルの主因は、不動産投資の仕組みよりも、不動産投資の基本や原則を軽視した、無理な事業計画にある場合が多いようだ。

「不動産に掘り出し物はない」

 不動産投資は、「安定」した家賃収入を「長期」にわたって受け取ることができ、「比較的高利回り」であることが魅力と言われている。「かぼちゃの馬車」問題などによって、これらのメリットが否定されたと感じた人も多いと思われる。しかし報道によれば、スマートデイズが購入者(投資家)と結んでいた契約は、土地・建物の収益性とは関係なしに、購入者の年収に応じて販売価格を設定し、周辺相場とかけ離れた家賃を設定して8~9%の高利回りを約束するなど、不動産事業の基本的なモデルとは相当に異なる部分があったようだ。この問題では、金融機関の融資姿勢などが購入者の判断に影響した可能性が指摘されているが、不動産市場の実態を的確に把握していれば、上記のメリットを享受できる点までは否定されていないと思われる。

 不動産は個別性が強いため、専門家でも判断が難しい部分がある。その一方で、多くの専門家は「不動産に掘り出し物はない」と主張している。売主に特別な事情がない限り、あるいは相当に希少な物件でない限り、相場から大きく乖離した価格の物件が流通する例は少なく、また、市場動向を無視した事業が成立する可能性は低いと言える。

マンション家賃は、2017年から上昇傾向

 図表1に、東京23区の賃貸マンションについて、(1)J-REIT(不動産投資信託、詳細は後述)が運用する物件の成約賃料、(2)アットホーム(株)の資料による成約賃料、(3)東日本レインズ(公益財団法人東日本不動産流通機構)の資料による登録賃料、の3種類のデータをまとめてみた。

 J-REITが運用する賃貸マンションは、最寄駅に近い、築浅の物件が中心で、建物のグレードも高いため、平均的なスペックの物件よりも家賃は高めと言える。これに対して、アットホームと東日本レインズの資料の集計対象には、やや築年数が経過した物件や、立地条件に難点があるものも含まれている(アットホームは、新築物件と既存物件を区分したデータも公表している)。登録賃料は「大家さんの言い値」、成約賃料は実際に入居者と賃貸借契約が締結された賃料水準である。エリアによって例外もあるが、東京23区の場合、利便性が高く、一定水準のスペックを備えた物件でなければ入居者が集まらないため、成約賃料の方が、登録賃料よりも高くなる傾向がある。大雑把な表現をすると、一般的な投資用マンションの家賃は、「J-REIT物件」と「アットホーム資料」の範囲内に収まる例が多いと考えられる。

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