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アメリカ海兵隊から学ぶ、「強い組織」3つの秘密 大分県立芸術文化短期大学教授 植村 修一

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 かねてより、アメリカ軍の中でも最強といわれるのが、アメリカ海兵隊です。第二次世界大戦で日本軍は、ガダルカナル、タラワ、ペリリュー、硫黄島、沖縄と、太平洋の島々を巡る重要な戦いで悉(ことごと)く敗れ、いわば、海兵隊は憎き仇同様の存在でした。『失敗の本質』の野中郁次郎氏は、アメリカ海兵隊の組織論的研究でも知られ、『アメリカ海兵隊』(中公新書)や『知的機動力の本質』(中央公論新社)などの著作があります。

「自己革新」の組織

 『アメリカ海兵隊』では、海兵隊の歴史が述べられ、彼らが全体として、存在理由や任務に応じて変化する、「自己革新」の組織であったことが示されます。

 『知的機動力の本質』では、常に多様で不確実性の高い戦い(とくに水陸両用作戦)を強いられてきた海兵隊が、リーダーのみならず構成員一人ひとりが、環境変化や組織の動きを敏感に感じとり、戦略や戦術をダイナミックに変えつつ組織的に行動していく、そのためのシステムが詳細に説明されます。そこでは、単なる体力、胆力、武器の優位性だけでなく(海兵隊と聞くと、われわれはつい、ブート・キャンプで鍛え上げられた「マッチョ」を連想しますが)、高度な専門的職業意識のもとで、「暗黙的なコミュニケーション能力」が期待されます。そして、こうした能力が組織的に定着した状態を指すのに、「文化」という言葉も使われます。

不確実性の時代に求められること

 野中氏には、こうしたアメリカ海兵隊が持つ「強み」が、不確実性の中で絶え間ないイノベーションが求められる今の日本企業にとって必要であると同時に、もともと暗黙知が得意とされてきた日本企業にそれができないはずがないとの思いがあるようです。

 第二次世界大戦の勝敗を決めた要因は、圧倒的な国力と軍事力、技術力の差と一括りにされがちですが、技術力に関し、連合軍の様々な「現場主体のイノベーション」を取り上げたのが、歴史家ポール・ケネディの『第二次世界大戦 影の主役』(日本経済新聞出版社)です。

 国際政治経済や戦略史を専門とする彼が行ったのは、有名な軍事作戦や戦争指導者、個々の卓越した兵器や技術などに焦点を当てるのではなく、民間と軍双方の小規模な集団や組織の創意工夫がいかに問題解決に役立ったか、それがどれだけ戦争の帰趨に影響を与えたか、を示すことでした。すなわち、ソリューションビジネス的発想と、それを担う人々や組織がなければ、経営戦略の実現や経営資源の十分な活用はできないということです。

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