未来の働き方を大予測

「AIが仕事を奪う」はウソかもしれない 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 コスト、見栄えという問題の次に、AI特有の課題も挙げられる。

 現在のAIは一つの作業に特化して、猛烈なスピードで自動的に習熟を遂げることができる。ただ、多彩な仕事はできない。そのため、7~10のタスクごとに専用のAIが必要となる。その投資もばかにならないが、それに付随して発生するタスク間の調整やメカトロの進化なども厄介だ。たとえば新しいデザインのケーキが発売されたとしよう。陳列に特化したAIはその並べ方を、各店舗の監視カメラの画像などから、熟達スタッフのやり方をあっという間に習得してしまうはずだ。一方、その斬新なケーキを箱詰めするAIも同様に梱包法をキャッチアップする。バックヤードからそれを補充する特化AIも同様だ。こうして各工程が一皮むけて刷新される。当然、そのためにはメカトロの調整も必要だし、工程間で「進化後の工程の連携に齟齬が出ないよう」調整も必要となる。現状のメカトロレベルや特化型AIというのは、こんな不自由なものなのだ。

 翻って考えてみよう。建設でも製造でも、資金的余裕のある大手・先端企業は、自動化投資を行い、人手を機械に代替してきた。それでも今、仕事は多数残っている。それは自動化投資が成り立たない、コマ切れで多彩な物理的作業の集合体なのだ。だから、このケーキショップと同様に「機械代替は簡単にはできない」という返答がどこからも寄せられた。

 こうした単純といわれるけれど、多彩な物理的作業が伴うたぐいの仕事は、AIが「全能アーキテクチャー型(後日説明)」に進化し、同時に一つのメカトロが人間のように多彩で変容可能な作業をこなせるようになるまで、人手に頼ることになる。2030年やそこらでは、全くそこまでは行きついてはいないだろう。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。

キーワード:経営、企画、人事、経理、営業、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、働き方改革、マーケティング、人材、研修

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