未来の働き方を大予測

「AIが仕事を奪う」はウソかもしれない 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 20世紀の初め、世界には帝国主義的価値観が蔓延していた当時。その頃は、労働は農林水産業従事者が圧倒的に多く、続いて製造・建設業が急激に雇用のウイングを広げていた。知的労働者はほんの一握りにすぎなかった。もちろん、パソコンも携帯もインターネットさえなく、そうしたユビキタス社会は、「夢の世界」でさえまだ語られていなかった。それが、100年間のゆっくりかつ継続的な変化により、かつての人たちからは想像もできない社会となった。私たちはその変化に順応し、キャリアや教育もしっかりアップデートされて来た。この先100年も、それと同じかやや大きい程度の変化対応が、必要となる。そう考えれば怖くもなくなろう。

単純労働は機械代替できない。大手企業の担当者の正直な意見

 さて、フレイ&オズボーンの研究や、野村総研のそれは、どこが間違っていたのか。たとえば前者は、発表時点で査読付き論文ではなく、単なるディスカッションペーパーだった、というような些末な問題をあげつらって、揚げ足取りをするのはやめておきたい。私が問題視しているのは、両研究とも「雇用実務・現場を全く調べていない」ということなのだ。70弱の職務について機械研究者にそれが機械にとってかわれるかをヒアリングし、その主観的回答をメタ化して結論を出している。内容自体は非常に興味深い。ただ、その結論を、雇用現場にぶつけてエビデンスを取る、という作業はしていない。それは大変「惜しい」と言わざるを得ない。なくなるといわれた職務について、ほんの2、3でもいいから実務者に確認していれば、現実はけっこう違うとはっきりと見えたのだから。

 製造業、建設業、サービス・飲食業、流通・販売業。こうした就労人口が多く、そして、今後なくなるといわれれがちな俗にいう「単純労働」はそう簡単になくならない。それらの産業に属する大手企業では、今でも自動化投資に余念がない。名だたる大学の研究者や、大手ハイテク企業と研究を続けている。ただ、現時点での結論は、異口同音に「そう簡単に自動化は無理」。付言しておくが、さらりと広報通しで取材をすると、「AI化に向けて邁進しており、順調に自動化が進んでいる」という情報が渡される。企業イメージや株価材料としては、そうした話がもてはやされるからだ。ところが、自動化の責任者たる人間としっかり関係を作って本音を聞くと、こたえはNoなのだ。そして、先に出た4産業がほぼ同じことをいう。AIで自動化できない理由はこんなことなのだ。

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