”社風”の正体

同族経営は有利なのか、不利なのか 大分県立芸術文化短期大学教授 植村 修一

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 同族経営(企業)、ファミリービジネス(企業)などと呼ばれる会社があります。もっぱら特定の一族が所有や経営を行っている企業で、中小企業ではごく一般的ですが、大企業でも、意外に知られていないが実は同族経営という先が、少なからずあります(例えば、大手ゼネコン5社に入る竹中工務店)。地方はとくに同族経営が多く、私がいる大分の地元の企業で、同族経営でないところを探すのが難しいくらいです。

欧州では企業名と一族がセットで語られる

 そもそも資本家が事業を起こし、ビジネスを拡大させた場合、突然引退を表明し、廃業するはずもなく、何らかの形でそれが継続されるべく取り計らうのは自然の成り行きです。その際、家族や親族を中心に引き受け手を探すのは、コストの面からも心情的にも理に適っているといえます。とくに伝統を重んじるヨーロッパでは、フォルクスワーゲンにおけるピエヒ家やポルシェ家、BMWにおけるクヴァント家、ルイ・ヴィトンにおけるヴィトン家など、企業名やその歴史と一族の名がワンセットで語られます。中国、韓国、台湾といったアジア諸国もそうですし、アメリカでも、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、ウォルマート流儀という企業文化(従業員の尊厳や顧客重視など)を生んだ創業者サム・ウォルトン以来の一族がCEOに就いています。

日本の上場企業、同族経営に軍配?

 では、同族経営はそうでない場合に比べ、有利なのでしょうか。

 日本経済大学の落合康裕准教授らが上場企業を対象に行った調査(2015年、東証1部・2部、地方上場企業が対象)では、測定期間(5年間)を通じて、同族企業(調査ではファミリービジネスと定義)の自己資本比率、流動比率(流動資産÷流動負債)、総資産利益率(ROA)は、非同族企業(調査では一般企業と定義)を有意(統計学的に、偶然である確率が極めて小さいという意味)に上回るとの結果が出ました。すなわち、同族企業は一般に、より安定的で無駄のない経営を行っていることがわかります(「ファミリービジネス白書2015年版」)。

 同様に、『一橋ビジネスレビュー』(15年8月号)では、シンガポール国立大学ビジネススクールのウィワッタナカンタン・ユパナ准教授と京都産業大学の沈政郁准教授が、1962年から2000年までの非常に長い期間にわたって、日本の上場企業におけるファミリー企業と非ファミリー企業の業績比較を行っています。具体的には、企業規模、負債比率、企業年齢など、一般に企業業績に影響を及ぼすと考えられる諸変数を考慮した上で、両者の総資産利益率(ROA)に有意な差がみられるかを検証しました。結果は、やはり、ファミリー企業が有意に非ファミリー企業を上回るというものでした。

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