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コンプライアンス重視とハラスメント対応の変化 弁護士 丸尾拓養

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1、コンプライアンス窓口とハラスメント窓口は本来異なるものである

 近年、企業の法令遵守という意味でのコンプライアンスがより強く求められるようになりました。企業もこれに理解を積極的に示します。法律上の抽象概念についてガイドラインや指針を求め、これを遵守することでコンプライアンス重視の姿勢を外に示します。ひとたび不祥事が起きると社会は企業を指弾し、企業は第三者委員会を立ち上げて原因究明と対策を図ります。このスキームの流れの中で、本来の企業内部の自浄努力は忘れられてしまったかのようにも見えます。

 コンプライアンスの仕組みのひとつとして、内部通報窓口が用意されます。企業内の法務部門の担当者が関与することが多いようです。内部通報者らを保護するために、公益通報者保護法が制定されました。しかし、同法の保護の要件をみたさないとして、通報者に対する解雇等の不利益処分を認めた下級審裁判例も出ています。通報の実態には多様なものがあるのでしょう。

 これとは別に、セクシュアルハラスメント(セクハラ)に関して、男女雇用機会均法が事業主に講ずべき措置を求め、そのひとつとしてセクハラ窓口が設けられました。「ハラスメント窓口」として、いわゆる「職場のパワーハラスメント」を含めた「職場のハラスメント」(Workplace Harassment)の統合した窓口となっている例もあります。2017年1月に改正された指針では、育児・介護休業に関するハラスメント、妊娠・出産に関するハラスメントについて、セクハラ窓口と同様の運用が求められています。法は職場のパワーハラスメントと、均等法・育児介護休業法のハラスメントとを区分しています。

2、ハラスメントは労働者が他の労働者に行うものである

 ハラスメントは労働者と労働者の間の事案と整理されました。職場内で労働者が他の労働者に行うハラスメントです。当事者はともに労働者です。事業主が労働者に行うのは「不利益取扱い」です。ハラスメントは「いじめ、嫌がらせ」や差別的言辞などの事実行為です。労働者が他の労働者に対し行ったハラスメントにより「職場環境」が害されたとき、事業主は「雇用環境」の復旧と再発防止の措置を講じることを求められます。

 こうして見ると、企業に、ひいては株主に損害を与えるような企業内の組織的な違法行為を対象とするコンプライアンスの窓口と、労働者間の個人的な人間関係のトラブルともいえるハラスメントの窓口とでは、構図も期待される機能も異なるはずです。少なくとも、ハラスメントを企業のコンプライアンスの中心的な対応課題として捉えることは不適当でしょう。ハラスメント窓口は、ハラスメントが実際に起きる職場や人事部門での対応を補充する位置付けとなります。

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