日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

日立が本気のSDGs、社会課題起点のイノベーション目指す 慶応大学大学院特任教授/横田アソシエイツ代表取締役 横田浩一

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「つながり」が社会変える原動力に

 ソーシャルとは一般的に「社会の」「社会的な」と訳されるが、「つながり」「世間」という意味をもつ。最近では情報コミュニケーションツールとして定着したSNSもソーシャル・ネット・ワークサービスの略で、人のつながりを提供するサービスを意味する。そして、社会はそもそも人と人とのつながりを形成する仕組みであり、そのネットワークのもとで、それぞれが力を発揮してその効用を最大化させる、あるいは改善しようということが社会本来のあり方だ。しかし社会課題の多くは、実はこうしたつながりの機能不全から起きている。企業が社会課題を解決しようとする場合、機能不全に陥ったつながりをうまく機能させるかが大事で、つながりの好循環をつくることが社会を変える原動力となる。

 例えば、2016年6月、岩手県釜石市と日立製作所などによる、釜石市における地域活性化に向けた取り組みに関する協定を締結した。商店街の活性化や地場食品のブランド化などを目的とした。

 ことの発端は、2012年から釜石市唐丹町に日立製作所ICT事業統括本部が釜石に縁を持ったことだ。被災地は一時、ボランティアや営業目的で外部の人間がドッと押し寄せるが、いつしか潮が引くようにいなくなってしまうパターンが多く、地元の方々には外部の人間への距離感が体験的にできてしまっていたと感じていた。そこで「こんなことをやります」「こんなことができます」とはあえて言わず、毎月訪問を重ね、釜石市唐丹町の方々が「何を必要としているのか」「何に困っているのか」に耳を傾け続けたという。

 そして、釜石の社会課題や市役所、コミュニティなどに興味を持ち、この地でプロボノの支援を行うことを目標に、2013年3月に東京にある日立のオフィスに釜石から地元の水産加工会社社長やNPO団体代表を招き、社内説明会を開催した。説明会には 100人以上の社員が参加した。手を挙げた社員から10人程度に絞り込み、チームを編成。チームメンバーの上司にも主旨を説明しコンセンサスを得た。また現地への旅費や開発環境機材などは CSR 部が負担し、個人や所属する組織に負担がかからないように配慮した。企業理念に沿った活動であること、自分たちの専門能力である ICT を活かして社会貢献ができることが共感された。

 地元の水産加工業、釜石ヒカリフーズの佐藤正一社長も「(日立のみなさんは)3年間、毎月のようにこの街にきてくれました。すごく真剣に地域を良くしようとする姿に感銘を受けたし、我々ももっとがんばってお答えしなければならないと思っています」と期待を語っている。

長期的視点、社会的視点で企業価値高める

 行政、企業、コミュニティの重なった部分をターゲットにして、協創を基本とし、大局的な思考を育む環境づくりによって、優れた解決法を生み出せるだけでなく、生活の質の向上にもつなげることを目標としている。また、営業や開発など現場はどうしても目先の営業数字など短期の目標に精一杯になる。しかし、CSRという範囲で、数字のコミットメントがない環境において、社会課題解決に向き合うことは、将来のことを考え長期的、また社会的な視点からものを見ることができる人材を育てることになる。

 このように、いままで実行している社会的な活動、事業をSDGsの視点から整理し、さらに強味を生かし、リスクを考え減らしていくということが重要である。日本企業は、そもそも社会的視点をもって活動をしている企業が多い。そういった意味からも、SDGsに取り組むことは、社会的視点、長期視点で事業を続けるため事業機会やリスクを考えるいい機会だ。また、儲からなくてもやらなければならないこともある。その取り組みがサスティナビリティを向上させ、結果として企業価値を大きくする。

 6月から、日立製作所出身の中西経団連会長体制が始まった。経団連はSDGsの取り組みとしてSociety5.0という戦略とも絡めながら推進している。今後企業のSDGsの取り組みは一層本格的になることが予想される。

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キーワード:経営、企画、技術、製造、学生、経営層、管理職、プレーヤー、経営、マーケティング、働き方改革、AI、IoT、ICT、イノベーション、ものづくり、ソーシャルビジネス、ソーシャル、CSR、CSV、ESG、環境問題、SDGs、バイオマス

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