デジタル化で飛躍するASEAN

シンガポールの新潮流、コラボから生まれるイノベーション CLO LABS CEO 三井 幹陽

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 シンガポールのイノベーション最新トレンドは、エコシステムを活用してのコラボレーションです。その中でも特に、大企業がリードを取り、スタートアップや中小企業などとともにイノベーションを起こすコラボラティブイノベーションが最も注目を浴びています。

なぜ今、コラボラティブイノベーションなのか

 スイスのビジネススクールとシスコ社が行ったリサーチによると、大企業とスタートアップは異なるケーパビリティをもっており、それらは補完関係にあります。大企業は通常スタートアップにはない資金力、ブランド力、カスタマーベースをもっているのに対して、スタートアップは通常大企業には容易ではないスピード、アジリティー、リスク・テーキングのカルチャーがあるわけです。これらのケーパビリティーを敵対関係としてみるのではなく、補完関係としてみて、イノベーション実現のために力をあわせるというアプローチが、コラボラティブイノベーションです。

 ではなぜ今、コラボラティブイノベーションなのでしょうか。まず近年、シンガポールのイノベーションエコシステムが成熟してきたという大きな理由があります。コラボラティブイノベーションが成功するためには、イノベーションのエコシステムが成熟していないといけません。つまり、エコシステム内で各プレーヤーがそれぞれの役割をしっかりと果たしている必要があるわけです。簡単にまとめると以下の通りです。

※幅広い分野に渡る数百、数千のスタートアップ
※イノベーションに積極的に投資をしている大企業
※イノベーション人材を育成する教育機関
※各プレーヤーをつなげるプラットフォームや場
※資金を提供するエンジェル、VC
※イノベーションの土壌をしっかりと固める政府

 また、大企業が対応できる以上にデジタル化が早く、ディスラプティブであることも挙げられます。例えば、昨今話題になっていますが、東南アジアのUBER事業を買収したGRABなどのライドヘーリングサービスの市場参入のインパクトを見てみると、彼らが参入する前の2012年には28,000台以上のタクシーが走っていたのに対し、500台程度のプライベートカーのサービスしかありませんでした。しかし、2013年の参入後、70倍という驚異的なマーケット拡大をし、2017年半ばにはライドヘーリングサービスは4万台を超えています。その間、そして今も、タクシーの台数は減少傾向を辿っています。

 このようなデジタル化の波、そしてテクノロジーによる改革の力は様々な業界に強力なインパクトを与えており、自社のケーパビリティーのみに頼り、イノベーションを追求するには難しい時代になったのではないでしょうか。

指摘したい3つの事例

(1)ユニリーバにはイノベーションアームであるユニリーバ・ファンダリーが存在しています。そのシンガポールでのオープンイノベーションの場所はLEVEL3と呼ばれており、そのイノベーションプログラムには30社のスタートアップが参加しています。ユニリーバのビジネスニーズに合わせてスクリーニングされたスタートアップはシンガポール、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ヨーロッパ、そしてアメリカから集っており、ユニリーバのリソースやネットワークへアクセスが可能です。また、世界最先端のイノベーション事情に精通するためにも、LEVEL3のアドバイザリ・ボードにはグーグル、ラザーダ、WPPなどのシニアエグゼキュティブが名を連ねています。

(2)シンガポール3大銀行のうちの1つであるUOB銀行は、シンガポール政府のイノベーションアームであるSG INNOVATEと共同でFINLABを運営しています。FINLABは中小企業のデジタル化を加速させるために4カ月間のアクセレレータープログラムを実施し、中小企業がテクノロジーをもつスタートアップと協業できるよう支援しています。現在、7社の中小企業がFINLABの提供するプログラムに参画中です。

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