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同床異夢かもしれない「同一労働同一賃金」 弁護士 丸尾拓養氏

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 2016年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が公表されました。2017年3月28日に働き方改革実現会議が決定した「働き方改革実行計画」には「別添1」として付されています。同ガイドライン案は政府が働き方実現会議に提示したという形式がとられています。

問題とされるのは正規・非正規雇用間の「不合理な」処遇差

 「同一労働同一賃金」という表現が先走りしている感がありますが、同ガイドライン案の前文には、「同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。」との整理がなされています。「不合理な待遇差の解消」であり、一般に理解される「同一労働同一賃金」の語感とは異なるのかもしれません。

 カッコ内の有期雇用労働者については、既に労働契約法20条で「不合理な労働条件の禁止」が規定されています。パートタイム労働者については、パートタイム労働法8条で「(短時間労働者の待遇の原則)」として一定の場合に「不合理と認められるものであってはならない」旨が規定され、さらに同法9条で同じく「差別的取扱いをしてはならない」旨が既に規定されています。同ガイドライン案が「いわゆる正規雇用労働者」を「(無期雇用フルタイム労働者)」としたことは、無期/有期、フルタイム/パートタイムでの「不合理な待遇差の解消」を目的としたものであり、立法上の対応は、派遣法以外については、現時点でも一応はできていることになります。

 同ガイドライン案で具体例として書かれていることがやや刺激的であり、実務では戸惑いの声も聞かれました。「本ガイドライン案は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示したものである」という部分は、ガイドラインという位置付けであったとしても、やや強すぎるようにも思われます。一方で、「もとより賃金等の処遇は労使によって決定されることが基本である」という一節もあります。公法的な介入の必要性、相当性については、多種多様な考え方があるでしょう。「問題となる例」と「問題とならない例」という表現が用いられていますが、これが法的にいかなる意味を有するのかは不明です。「働き方改革実行計画」の「図1:同一労働同一賃金のガイドライン案の構造」には2つの例の間にグレーゾーン、すなわち「どちらにもならない例」の領域があり、相応の幅を有するようにも見えます。「原則となる考え方」「典型的な事例」という表現がとられていることからも、「問題となる例」の射程は相当に狭いものになるのかもしれません。

「同一労働同一賃金」は「違う労働違う賃金」である

 「同一労働同一賃金」が標榜されることで、非正規雇用者の処遇改善が企図されているのでしょう。「働き方改革実行計画」の工程表の中には「非正規雇用者の処遇改善」が検討テーマとして挙がり、対応策として「同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備」が挙げられています。

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