石澤卓志の「新・都市論」

公示地価が示す「変わり目」、どう読み解くか みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

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 国土交通省が3月27日に公表した公示地価(2018年1月1日時点)では、様々な「変わり目」が示された。全国・住宅地の地価が10年振りに上昇し、地方圏・全用途平均も、小幅(前年比+0.04%)ながら26年振りに上昇に転じた。都心部の住宅が高くなり過ぎたため、住宅需要が強いエリアが広域化したことや、インバウンド需要や物流施設需要が地方圏でも拡大したことが地価を押し上げた。不動産需要は、これまで大都市中心部に集中していたが、やや異なる動きが出てきたと言える。

インバウンド需要がオフィス需要を上回った

 筆者は、今回の公示地価では、地価上昇率が前年調査よりも縮小すると予想していた。東京都心部などでは、地価が相当な高水準に達したため、不動産投資の利回りが低下している。このため、国内法人としては最大の不動産の「買い手」であるJ-REIT(不動産投資信託)には、高値取引を避けて、不動産取得を抑制する動きが出ていた。

 不動産投資が縮小すれば、地価の上昇テンポは減速するはずである。ところが今回の公示地価では、全域(東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏)において、全ての用途(住宅地、商業地、工業地)で、地価上昇率が拡大(または下落率が縮小)した。これは、不動産投資の落ち込みを、インバウンド需要を背景とした店舗賃料の上昇や、ホテル開発の効果などがカバーしたためである。

 今回の公示地価では、全国・住宅地の上昇率1位~3位と、全国・商業地の上昇率トップを、北海道倶知安町の調査地点が独占した。倶知安町は、オーストラリア人向けの別荘販売などが好調で、「最も成功した地域開発の事例」と評価されることもある。

 また、全国・商業地の上昇率2位~4位・6位を、外国人観光客に人気が高い大阪と京都の調査地点が占めた。この結果、大阪圏では地価水準トップの地点が、ビジネス街の梅田エリア(グランフロント大阪南館・タワーA)から、商業施設中心の心斎橋エリア(クリサス心斎橋)に移った。「インバウンド需要がオフィス需要を上回った」と言えそうだ。

 東京圏では、12年連続で地価水準全国トップとなった「山野楽器銀座本店」の地価が前年比+9.9%と大きく伸びて、ビジネス街としては地価水準トップ(全国・商業地の地価水準5位)の「丸の内ビルディング」の上昇率(同+2.3%)を上回り、両者の価格差は、前年の44.7%から55.5%に拡大した。

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