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70歳までにがんになる確率は? 50代で増える病気とけが 70歳定年時代の健康管理(上) 健康企業代表・亀田高志

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 がん・心臓病・脳卒中などのリスク

 高年齢労働で次に考えるべきはがん、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞等の心臓病、脳梗塞やくも膜下出血のような脳卒中、日常に支障が出るような腰痛症、視力に影響する白内障や緑内障、聴力の低下する老人性難聴等の健康問題です。一例として、もしもがんと診断された場合に個人の立場で経験するであろうことを列挙してみました。

・心理的に強いショックを受ける。落ち込む。不安にとらわれる。
・可能な段階で家族に話す。相談する。
・主治医と精密検査や手術等について相談する。臓器や部位、進行の程度や全身状態を考慮し治療を選択する。
・上司に報告し、有給取得、休業、休職の見込みを伝え、担当業務の割り振り等を相談する。
・家族等に帯同してもらい入院する。

 生命保険会社等の宣伝もあって、がんとなる確率が一生のスパンで男性が6割強、女性が5割程度であると聞いたことがあるかもしれないですが、我が事と捉えている働く人は少ない、と実感します。50代以降に就労期間中にがんと診断されるのは、以下のような確率です。例えば今、55歳の男性が70歳までの15年間に何らかのがんと診断される確率は18.0%、同じ年齢の女性では12.7%となります。この確率は「多分、大丈夫だろう」と楽観視できるレベルではありません。

 病気のリスクに応じた備えが大切に

 けがと同じように、がんと診断された場合にも、多くの働く人は休業、休職の手続きを踏まなければなりません。来る手術等を心配しながら、お金の面で自宅や自動車のローンや教育費の支払いを確認し、就労できない期間の収入確保や預金が十分であるのかにも思いを巡らせる必要があります。

 がんと診断された人のうち、少なからぬ人たちがそのことを告げずに職場を辞めていくという厳しい現実もあります。上司なり人事部門なりに素直に伝えられないとか、死を意識してそれまでとは異なる生活を望むこともあるかもしれません。単身の場合には打ち明けて、その後のことを相談する相手もないこともあります。

 手術を終え、退院して自宅療養から職場復帰する際には、低下した体力と気力を奮い立たせて乗り越えなければなりません。自宅療養等をしている間にうつ状態や適応障害といったメンタルヘルス不調を抱えてしまう人も少なくありません。そのことの影響も決してたやすくありません。さらに上司や同僚には負担をかけた後ですから、それまでの所属する部門での立ち位置と人間関係が変化している可能性があります。

 がん以外にも病気を持ちながら働く人は多く、心臓病は75万人、脳卒中は23万人というデータもあります。50代以降の働く人は動脈硬化による病気等にも、ご自身のリスクに応じた心構えが必要な時期に来ているのではないでしょうか。

亀田 高志(かめだ・たかし)
株式会社健康企業代表・医師・労働衛生コンサルタント。1991年産業医科大学卒。大手企業の産業医、産業医科大学講師を経て、2006年から産業医科大学設立のベンチャー企業の創業社長。16年に退任後、健康経営やメンタルヘルス対策等のコンサルティングや講演を手がける。著書に「【図解】新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」「【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策」(いずれも新刊、エクスナレッジ)、「健康診断という病」(日経プレミアシリーズ)、「課題ごとに解決! 健康経営マニュアル」(日本法令)、「改訂版 人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援」(労務行政)などがある。

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