どこでもオフィスの時代

「いつでもどこでも働ける」ユニリーバを変えたトップの力 みつめる旅

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 新入社員も転職直後の人も全員が対象

 社員自身が、自分が一番パフォーマンスを発揮できると感じる「場所」と「時間」を、自主的に選んでいくWAA。スタートからわずか6か月で定着し、92%の社員が活用する成功例となりましたが、やはり2016年の導人当時はハードルがありました。

 WAAも当初はうまくいくかどうか、もちろん不安でした。WAAの場合は、『サボる人が出てくるんじゃないか』『チームワークがとれなくなるんじゃないか』などというネガティブな声が社内からたびたび出ていました。でも、ジャパン代表の『これは絶対に必要な制度なんだ』と信じる力がとにかく強かったので即実現し、短期間で社内に定着しました。
 当初は新卒入社6か月以下の人と、中途入社3か月以下の人はWAAの対象外としましたが、マネジメントで問題なくWAAを適用できると判断して、すぐに撤廃しました。なぜWAAをするのかを社員一人ひとりにしっかり伝えてマインドセットを整え、マネジメントやチームビルディングのトレーニングを徹底して行えば支障なくWAAができるとわかったんです(島田さん)

 2017年時点でWAAが定着していたため、2020年春以降新型コロナウイルスの蔓延が深刻になってからも、業務に混乱はなくスムーズに進みました。

 WAAのような革新的な取り組みを社内で推し進めるには、リーダーシップがすべてだと島田さんは強調します。ユニリーバ・ジャパンの場合は、信念を持ったリーダーがいたからこそ、ここまでのスピード感で新しい制度を定着させることができました。

 エビデンスがなければ決断できないリーダーシップは古い

 WAAのような取り組みによって社員のウェルビーイング(幸福)を高めることが、経営にプラスに働くという明確なエビデンスがないじゃないか、という声はよく聞かれますが、実はエビデンスならすでにたくさんあります。幸福度と仕事のパフォーマンスの関係では、幸福度の高い人の方が、営業成績が37%高い(*)、欠勤が41%少ない(**)、退職が59%少ない(**)、不安全による事故が70%少ない(**)、変化への適応度が45%高い(**)など、数々の調査から定量データが出されています。
 でも、数字やエビデンスがないと判断できない、というリーダーシップはもう時代遅れだと思います。必要だと信じているのならやってみる。想定外の課題が生じれば、そのつど変更・改善していけばいいだけの話です。実際に新しい取り組みを会社の制度として実現し、定着させていくには、リーダーシップがすべてなんです(島田さん)

 ユニリーバ・ジャパンの取り組みの根底にあるのは、幸せに働ける「場所」と「時間」を自分でデザインできる自由を保障しなければ、優秀な人材を集めることができないという危機感です。ユニリーバ・ジャパンのWAAに共感し、自社などでも導人を目指す社外のネットワークは年々拡大していて、2021年夏時点でその数は2000人以上にのぼります。今後、個人レベルだけでなく、会社レベルでも「場所」と「時間」をデザインすることが当たり前になっていくでしょう。

 (*)Lyubomirsky, Sonja; King, Laura; Diener, Ed The Benefits of Frequent Positive Affect: Does Happiness Lead to Success?

 (**)Gallup- Gallup's Q12 Meta-Analysis Report – study of 82,248 business/work units that included 1,882,131 employees to examine the true relationship between employee engagement and performance, compares top quartile with bottom quartile

一般社団法人みつめる旅著『とこでもオフィスの時代 人生の質が劇的に上がるワーケーション超入門』(日本経済新聞出版、2021年)、「第4章 今、自分が欲しい『刺激』を取りにいく」から抜粋。転載にあたり一部編集しました。

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