どこでもオフィスの時代

「いつでもどこでも働ける」ユニリーバを変えたトップの力 みつめる旅

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 オフィスに出社しないで自宅で仕事をするリモートワークが新たな働き方として定着しました。この過程でわかったのは多くの仕事が「どこでもできる」ということでした。この動きはさらに進み、オフィスから離れた地域に住んだり、一定期間リゾート地などで働くワーケーションへの関心が高まっています。働く人が自分の好きな場所で働けることは、実は企業にとっても有益なことが多いといいます。この連載では、一般社団法人みつめる旅著『どこでもオフィスの時代 人生の質が劇的に上がるワーケーション超入門』(日本経済新聞出版)をもとに、好きな場所で働くことのメリットを働く人、企業それぞれの側から解説していきます。第2回は社員が働く場所と時間を自由に選べる制度を2016年から導入したユニリーバ・ジャパンのケースを紹介します。取締役・人事総務本部長の島田由香さんに聞きました。

 

 ユニリーバ・ジャパン「いつでもどこでも働ける」は確実に社員の幸福度を上げる

 パフォーマンスが最大化する働き方は本人が一番知っている

 ユニリーバ・ジャパンが2016年からスタートさせたWAA(Work from Anywhere and Anytime)という制度は、その名前の通り、働く場所と時間を社員が自由に選べるようにしたもの。いつ、どこで、どんなふうに働けば自分の力を発揮できるかは本人が一番よく知っているはず、という考えのもと、日本法人独自の制度として導人されました。

 WAAは新入社員も、マネジャー層も、全社員が対象です(工場や営業の一部は除く)。事前に上司に申請して、業務上支障がなければ、理由を問わず、平日朝5時から夜10時までの間で自由に勤務時間と休憩時間が決められ、自分の好きな場所で仕事ができます(2020年3月以降はコロナ禍により原則在宅勤務)。

 「美容院に行きたいから」「スポーツジムに行きたいから」「今朝は気分が乗らないから」「水曜日の午後は趣昧のピアノレッスンがあるから」「週1回は他社で副業をするから」……などなど、一人ひとりが自分と相談しながら一日のスケジュールを決められるようになっています。もちろん、この制度を使えば、旅先や帰省先でちょこっと仕事をすることも可能です。導人後すぐに定着し、今では対象部門の全社員がWAAを実践しています。

 「WAAは日本に絶対に必要だ」と自らジャパン代表に進言して制度を実現したという、取締役・人事総務本部長の島田由香さんに聞きました。

 ユニリーバの、日本以外の法人では個人が自分の“ライフ”を意識するのが当たり前なんです。例えば、オーストラリアなら金曜日は昼の3時に仕事は切り上げてサーフィンに行こうとか、アメリカでも夕方4時には帰宅して家族とゆっくりディナーを楽しもうとか。でも、日本ではどこか『歯を食いしばって長時間働いた人がエラい』という風潮が今もありますよね。だから、誰もが自分の人生にアテンション(注意)を向け、所定の時間内で最大限のパフォーマンスを発揮し評価されるようにするにばWAAが必要だと考えました(島田さん)

 地域に貢献した社員には旅費が支給される場合も

 2019年の夏からは、進化型のWAAとして、地方自治体と連携したワーケーション「地域 de WAA」もスタート(2020年3月以降はコロナ禍のため休止)。北海道下川町、宮城県女川町、山形県酒田市、福井県高浜町、静岡県掛川市、和歌山県白浜町、山口県長門市、宮崎県新富町の自治体と連携し、それぞれの地域が抱える課題について理解を深めたり、解決策を一緒に考える活動をすると、宿泊費が一部割引または無料になります。交通費は社員の自己負担、勤務中の事故などに備える保険料は会社負担にしています。

 例えば、宮崎県新富町では「地域 de WAA」をきっかけに自治体との共同プロジェクトが立ち上がりました。新富町には、天然の砂浜が8kmにわたり続く富田浜という海岸があり、毎年春から夏にかけてアカウミガメが産卵のためにやってきます。そのウミガメたちの産卵地を守るため地道な活動を続けている地域の人たちのことを社員が知り、スタートしたのが九州限定デザインの「ダヴ」発売の企画です。

 ユニリーバのブランド「ダヴ」のボディウォッシュ詰め替え用のパッケージに、地元の中学生が描いたウミガメのイラストを印刷、九州限定で発売しました。結果、九州地域でのボディウォッシュの売り上げが前月に比べて20%近くアップし、売上の一部をウミガメの保護に尽力している宮崎野生動物研究会に寄付することができました。その後、2021年6月にはプラスチックゴミを減らす取り組みとして、シャンプーやコンディショナーを量り売りする「リフィルステーション」も町内に開設しています。

 「地域 de WAA」はスタートしたばかりで、コロナ禍により休止していることもあり「まだまだこれからの取り組み」だと島田さんは言いますが、社員の側は普段関わらない人と出会い刺激を受けることでイノベーティブになり、地域の側はグローバル企業が持つ知識、アイデア、人材に触れることができ、双方にメリットがあると実感しているそうです。

 

 

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。