日経SDGsフェス

革新生む技術・人材 「知」の先駆者が貢献を 大学SDGsカンファレンス 基調講演・講演

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 2030年までに国際社会が達成すべきゴールを定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」。その実現のために、膨大な「知」を蓄えている大学はどんな貢献ができるのか。先ごろ開催した「大学SDGsカンファレンス」には、有識者のほか先駆的な取り組みを進める大学のトップや教員が登壇。特色あるプロジェクトや教育プログラムなどを紹介した。

日本経済新聞社と日経BPは2022年5月9日~14日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する世界規模イベント「日経SDGsフェス」を開催いたしました。

※2022年5月14日のプログラム「日経SDGsフェス 大学SDGsカンファレンス」から、基調講演と講演をダイジェスト版でご紹介します。

 基調講演 身近な課題、文理融合で

 ジャーナリスト 池上 彰氏

 私たちは「SDGsの達成は待ったなしだ」という危機感をどこまで持っているだろうか。2050年には、異常気象などで住まいを追われる「気候難民」が2億人に達するとの予測もある。50年の社会はどんな姿が望ましいのか。未来から現在を逆算し、「文理融合」で今何をすべきかを考える必要がある。

 SDGsには「開発」という言葉が入っている。持続可能な方法で発展していくためにどうすればいいかを考えることがポイントだ。世界のことだけでなく、国内の身近な問題について考えることも求められる。

 例えば、貧困や飢餓は途上国だけの現象ではない。日本にも満足に食べられない子どもたちがいる。貧困は教育格差や賃金格差を生み、少子化にもつながる。見えにくくなっている問題にどこまで気付き、考えられるかが重要だ。

 SDGsは50年後、100年後の人々が快適に暮らせる社会をつくるためのものだ。食料安全保障や健康な生活の実現、安全な水・トイレの普及、質の高い教育の提供、児童労働や環境汚染のない生産と消費、働きがいのある仕事と持続可能な経済成長、住み続けられる街づくりなど課題は多い。

 本当の豊かさとは何かを考え、生活の質(QOL)を高めていくことがますます重要になる。SDGsの17項目目に「パートナーシップで目標を達成しよう」とあるように、未来へ向けて共に一歩を踏み出したい。

 

◇     ◇     ◇

 講演 地球に要る事業を研究

 東京農工大学 学長 千葉 一裕氏

 石などから価値の高いものを生み出そうとする錬金術は化学の発展をもたらした。1909年には空気と化石燃料を用いて肥料となるアンモニアを生成する技術が開発され、世界の食料生産は大きく変わった。35年には米国でナイロンが発明され、化学繊維やプラスチックなどを自在につくれるようになった。

 こうしたイノベーションにより豊かで快適な社会になった半面、現代は気候変動などのグローバルリスクが顕在化。格差の拡大などで国際的な協調関係が不安定になり、SDGsの達成も危ぶまれる状況になりつつある。

 これからの地球で必要とされる「必然の新規事業」は何か。本学では人の「感じ方」を捉えるデジタル技術の開発や、森林を様々な社会課題の解決に役立てるための研究、新たな事業開発や起業を支援する枠組みの構築など先端的なプロジェクトを展開。ペットと共に健康に暮らす社会を実現するため動物の救急医療センターも新設する。「真にありたい姿」への共感の輪を広げ、課題解決の突破力とすることが重要だ。

 あるべき社会の具体的な姿を共有し、技術や情報はその目標達成に貢献できる形にしなければならない。イノベーションをけん引する人材を発掘し、未来の市場をつくる挑戦を推進していくことが必要だ。環境問題や食料問題は、自分がすでに加害者になっていることを認識することから始めなければならない。

 

◇     ◇     ◇

 講演 新たな循環型社会へ

 創価大学 理工学部 学部長/SATREPS-COSMOS研究代表 戸田 龍樹氏

 途上国では、栄養塩(窒素やリン)を含む廃棄物が自然環境に排出され、深刻な環境汚染を引き起こしている。微細藻類は、栄養塩を吸収し水質を浄化する機能を有し、栄養食品や機能性飼料、薬品などに利用可能なたんぱく質や抗酸化物質を生産する。本学では、この微細藻類をドライビングフォースとして、環境問題を引き起こす廃棄物から有価物を生産する、経済的インセンティブを伴う自立した「現代版の持続可能な循環型社会」の形成に向け、研究開発を行っている。

 マレーシアでは、エビの養殖で発生する有機汚泥が海に流され、サンゴの死滅や赤潮が発生。そこで、養殖汚泥から栄養塩を回収し、微細藻類を大量培養する実証試験を実施。低コストのフィルム製浮遊型培養槽を産学連携で開発し、デモサイト開設を実現した。

 エチオピアでは、富栄養化によって外来水草のホテイアオイが大量繁茂し、漁をなりわいとする人々の生活を脅かしている。本学は、ホテイアオイの固形分を炭化させ燃料や土壌改良材に、液分を発酵させメタンにする高速処理プロセスを考案。発酵後の液分から野菜や微細藻類を育て、栄養改善や雇用創出に寄与するプロジェクトを実施中である。

 現地に研究拠点を新設し、人材育成と技術移転にも注力してきた。今後もプロジェクトを発展させ、環境保全と栄養改善、QOLの向上とともに、次世代を担う人材の育成・輩出を通し、SDGsに貢献する。

 

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