リファラル採用に注目が集まっています。従業員が自身の知人・友人を会社に紹介する採用手法が、リファラル採用です。リファラル採用は他の手法と比べて、内定を得やすく承諾もしてくれやすい上に、入社後も定着し活躍することが分かっています。
有効性の高いリファラル採用ではありますが、「制度を導入したもののうまくいかない」という声も聞きます。従業員が知人・友人を紹介してくれないのです。知人・友人を会社に紹介することを「紹介行動」と呼びますが、紹介行動は従業員にとって業務そのものではありません。あくまで業務外の自発的な行動です。
従業員の紹介行動を促すには、どうすればよいのでしょうか。筆者は、MyRefer社との共同研究の中で、紹介行動を促す要因を調べてきました。その結果、「紹介インセンティブ」「会社への愛着」「求職者への支援意思」という3つの要因が重要になることが分かりました。
◆紹介インセンティブ
紹介インセンティブとは、紹介行動をとった従業員に対して報酬等を含めた、お礼をすることです(※1) 。「何らかのリターンがある方が、多くの行動が生まれるだろう」という発想です。学術研究では、紹介インセンティブが紹介行動を促すことが検証されています(※2) 。
しかし、注意が必要な点があります。確かに、紹介インセンティブは紹介行動を増やしますが、紹介インセンティブの金額を増やせば良いかというと、そういうわけでもありません。紹介インセンティブを増やすと、紹介の量は大きくなる一方で、質が下がります(※3) 。自社に合った優秀な人材を紹介してもらいにくくなるのです。
このことを考慮すると、紹介インセンティブが機能する条件がありそうです。一つは、紹介される人材の質をそこまで問わない場合です。そこにおいて、紹介の量が増やせる紹介インセンティブは有り難い制度です。もう一つは、紹介後に構造的な選考を行える場合です。気軽に紹介してもらっても、その後にきちんと見極めることで、人材の質を確保できます。
◆会社への愛着
会社への愛着を持つ人の方が、持たない人より、紹介行動をとることが知られています(※4) 。会社に愛着を持っていると、会社のために尽力したいという気持ちがあるため、知人・友人を紹介しようと思えるのです。
したがって、会社に愛着を持つ従業員から、紹介行動を促す声がけを始めるのが効果的です。そうした従業員は、実際に行動をとってくれる可能性が高いですし、知人・友人に対しても、自然な形で自社をすすめてくれるでしょう。
ただ、会社に愛着を持つ従業員であっても、会社から何も声がけをせずにいると、紹介行動をとってくれないかもしれません。何故なら、知人・友人を紹介する行動が、自分の会社に貢献することだと理解していない可能性があるからです。紹介行動を一つの選択肢としてもらうためにも、会社からの積極的な働きかけが必要です。