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リーダーのテレワーク術 オンライン会議の段取りワザ テレワークの新常識(下) リモートワーク研究所所長・八角嘉紘氏

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 上司を疑心暗鬼にさせない

 テレワークは日本ではコロナ禍に伴い、緊急対応策的に広まった。しかし、本来は「生産性を高め、働きやすい環境をつくることに貢献するしくみ」(八角氏)としてデザインされている。オフィスに戻りやすい状況が生まれたからといって、簡単に手放してしまうのはもったいない。むしろ、今後もオフィス勤務とテレワークが共存することを見越して、「テレワーク文化をさらに熟成させるべき」(八角氏)だろう。

 生産性を高めるにあたって意識したいのは、リアル対面のコミュニケーションに情報量を近づける取り組みだ。「リアル対面の情報量は膨大。オンラインの会議や商談ではちゃんと顔を映して、身ぶり手ぶりも加えて、情報量を補いたい。声だけのコミュニケーションなら、電話と変わらない。相手から見た印象も考慮して、露出を控えすぎない振る舞いが望ましい」という。

 会議の相手だけが画面に顔を出している場合、こちらが顔出しを拒んでいると、心理的なずれが生じがちだ。相手の側からすると、「顔の見えない相手」と話しているような気持ちになり、対話もぎくしゃくしかねない。

 「なぜ顔を出さないのかと、相手がいぶかしむようでは、話が弾みにくい。チーム内であれば、前もって『子どもがはしゃいでいるので』『スマートフォン経由の参加なので』といった感じで、顔出ししない理由を言い添えておけば、納得してもらいやすくなる」(八角氏)

 各種の制約が緩んで、オフィスに戻りやすくなりつつある中、上司が出社を期待する気配も強まっている。在宅でサボっているのではないかと疑心暗鬼になりがちな上司との間で、出社頻度を巡って、意見が対立するケースも起こり得る。

 八角氏はテレワークの働き手があらぬ疑いを受けないよう、身だしなみに気を配ることを勧める。「離れて働くからこそ、服装に代表される見た目の印象は、きちんと働いているかどうかのイメージを左右しやすい。パジャマ姿は不信を招いてしまいかねない」という。

 テレワーク環境では「働きすぎ」に警戒が必要だ。時間のめりはりがつきにくいうえ、集中力が高まりやすいから、長時間のデスクワークを続けてしまいやすい。リアルな対人関係が減ったことの「見えないダメージ」も無視できない。

 「メンタルの健康は損なって初めて気づくところがおそろしい。不調が進んでしまう手前の段階で、集中を緩めて、疲れを和らげるような習慣を持ちたい」(八角氏)。アラーム時計をセットして、強制的にデスクを離れるといったルールづくりが自分の心身を守るのに役立つだろう。

 必要に迫られて導入が広がったテレワークだが、「働き方をバージョンアップする効果は大きかった」と、八角氏は振り返る。オンライン会議をとってみても、従来のリアル対面式会議では座席の位置取りに社内の立場・ポジションが反映されていて、上座ゾーンに議論が偏在するきらいがあった。役職者・上席者の実物がその場に座っていることの威圧感は小さくない。

 しかし、画面上はフラットなうえ、全員のサイズが平等なオンライン会議では、「参加者が対等に意見を交わしやすい。肩書と発言力の相関関係が薄まった」(八角氏)。「会議の民主化」とも呼べそうな現象がわずか2年半で広まったのは、変化のスピードが遅いといわれがちな日本の企業社会では異例とも映る。

 メリットが多いテレワークだけに、再び旧来の会議スタイルに「先祖返り」させてしまわないためには「現場がテレワークを希望・支持するという意思を自ら示していく必要がある」。生産性アップの成果を見せながら、働きやすさや心理的安全性などの利点を訴えて、自社や職場にマッチしたテレワークを練り上げていく。そうした動きの積み重ねが「オフィスに戻れ」という圧力を弱め、勤め先にも働き手にもハッピーなテレワーク環境づくりにつながっていきそうだ。

八角 嘉紘(ほすみ・よしひろ)
リモートワーク研究所所長。大手コンサルティング会社で事業推進に関するコンサルティングを経験した後、ソニックガーデン入社。広報・マーケティングを担当。仮想オフィスの「Remotty(リモティ)」ではプロダクト責任者を務めている。リモートワーク導入や働き方に関するコンサルティングを得意とする。

 

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