複数の会議体を目的別に使い分け
テレワークが長期化するなら、じかに会えないメンバーとの一体感を保つスキルが「チームリーダーには求められていく」(八角氏)。その際に肝心なのは、オンライン会議を支える各種ツールの使いこなしだ。会議ソフトの操作も大事だが、リーダーに期待されるのは、(複数の会議からなる)会議体を組み立てる判断のほうだという。「会議の趣旨や目的に応じて、会議体を使い分けたい」(八角氏)
定例会議のような、議事があらかじめ決まっているタイプはそう難しくない。しかし、「淡々と議事が進む形式ばかりではチームの創意を引き出しにくい。ブレインストーミング式の議論もオンライン会議に取り入れたい」と、八角氏は複線的な会議体づくりを勧める。メンバーの多様な発想を生かすうえでも、こうした形式が有益だという。ホンダが強みとした、職場のあちこちで所属や立場を超えた議論が弾む「ワイガヤ(ワイワイガヤガヤの略)」流をオンラインで再現するような試みだ。
「5年後の営業部の姿」といった、ふわっとしたテーマでのブレストを成功させるには、あらかじめテキストベースで議論の下地づくりを進めておくとよいそうだ。グループチャット機能を用いて、ざっくりした論点を先出ししておく。メンションやホワイトボード、付箋などの機能を使って、議論のたたき台になるアイデアを整理・共有しておけば、本番で議論が散らかりすぎるのを防ぎやすい。
ブレスト式ではない、結論を出す趣旨のオンライン会議でも、こうした「露払い」は役に立つ。予備的な検討をツールで済ませておけば、「本番ではほぼ決める段階で臨める。貴重な会議時間の濃度を上げられる」(八角氏)。リアル対面型の会議が復活した場合でも、受け継ぐ価値のある会議カルチャーといえるだろう。
リアル会議で交わされる「しゃべり言葉」と、テキストベースの「打ち言葉(入力された画面上の文字)」とでは、おのずから印象が異なる。しゃべり言葉では気に障らないような表現でも、文字で見ると、強いトーンで感じられることもある。予備的な情報交換がいさかいや誤解の種にならないよう、「オンライン会議ならではの会議文化をチーム・職場ごとに育んでいくのが望ましい」という。
会議には昔から議事録がつきものだ。適切な議事録は検討を振り返ったり、欠席者がキャッチアップしたりするうえで重要となる。しかし、実際のメモ取り役には最も席次が低い者が任じられることも珍しくなかった。八角氏は自分がファシリテーター(進行役)を務める多くのオンライン会議で自ら議事メモを取るという。
進行役が議事録を書くのは、かつては割と珍しかったが、「資料の共有やホワイトボードの管理などを進行役が担当している事情もあって、自分でまとめるほうが議論と議事録両方のクオリティーが上がる。最初は面倒に感じるかもしれないが、少し訓練すれば慣れる」と、議事録係を買って出るメリットを説く。