新型コロナウイルスの感染拡大で普及し、ワークライフバランスの向上などのメリットが大きいテレワーク。しかし、長期の在宅勤務からストレスが蓄積しメンタル不調を訴えるケースも出始めた。自宅にいるのになぜ疲れるのか。緊急事態宣言は解除されたものの、テレワークの活用は今後も続きそうだ。循環器系医師の杉岡充爾・すぎおかクリニック院長は「簡単な気付きで在宅勤務のパフォーマンスを改善しメンタル不調を避けられる」と指摘する。
――通勤ストレスの解消、オフィスコストの削減、働き方改革による雇用創出など長所が唱えられてきたテレワークのマイナス面を指摘する声が出始めました。
「自宅でつい長時間業務になり、疲れがとれないと訴える患者さんが増えています。反対に、自由な時間が増えたもののコミュニケーションが取りづらく不安だと吐露する方もいます。深刻なのはストレスをため込んでいるのに自覚がないケースです。『耐ストレスホルモン』と呼ぶコルチゾールを体内で過剰使用すると副腎疲労に陥りストレスの緩和ができなくなります。精神・身体・神経疲労を引き起こします」
「テレワークで濃い味付けが好みに」は要注意
――なぜ自宅でストレスが蓄積するのでしょうか。
「オンオフの切り替えに体のリズムがついていけていないからです。休日に十分寝たのに疲れが取れないという経験は誰にでもあるでしょう。長時間の睡眠は自律神経(交感神経・副交感神経)の交代リズムの喪失を招きます。間違った休み方が、かえって脳や神経にストレスを与えるケースです」
「テレワークで(1)濃い味付けを好む(2)イライラする(3)肩がこる・背中が痛む(4)目の疲れ・乾き(5)コーヒーやエナジードリンクが飲みたくなる(6)足がつる――などが気になる方は知らず知らずにストレスを蓄積している可能性が高いのです」
――テレワークは仕事の生産性を高めるとされますが、会社の時よりも作業効率が落ちていると思う人も少なくありません。
「交感神経は何時間も連続で集中できません。さらにテレビや雑誌などの誘惑、家族の存在も気になります。生産性が落ちると作業時間が長くなり、長期勤務の疲労でさらに生産性が落ちる――悪循環に陥りやすいのです」