転職に欠かせない「情報の可視化」
――具体的に就活・転職に生かす手順はどうでしょうか。
「自分が希望する業種や職種だけでなく、給与・勤務地・将来取得できるかもしれない資格なども含めてできるだけ多くの要因を書き出す情報の可視化を推奨します。我々が物事を一度に処理できる概念の数は4プラスマイナス1程度です。思い出しやすい事例を優先する『利用可能性ヒューリスティック』と呼ばれる傾向を回避するためです」
「可能性を広げるために選択肢は多い方が良いですが、広げすぎると後悔を引き起こす可能性が出てきます。『どれを選べば良いか分からない』ことになるからです。この場合、自分がやりたい進路を探すよりも自分の性格や生き方などに合わない選択肢を取り除く方がベターでしょう。自分の志望が月日とともに変わっていくことがあるのに対し、苦痛に思うことは年齢を経てもそれほど変わりません。その上で予期後悔や反実的仮想思考をして志望企業を決めることが後悔の念を軽減します」
――就活では内定を複数の企業からもらい続ける学生が少なくありません。
「行動した結果の後悔よりも、行動しなかったための後悔の方が、長く記憶に引きずるという実験データがあります。予期後悔や反実的仮想思考をせずに就活を続けるのは、社会人となった後に、後悔の数を自ら増やしている行為といえます」
――企業の人事担当者はメタ認知能力の高い人材を採用したくなりますね。
「面接時にメタ認知能力を測る方法があります。その方法とは(1)自分が何が得意で何が不得手か知っている(2)考える選択肢をすべて考慮したか自問する習慣がある(3)考えがまとまらないときは全て白紙に戻してやり直すことができる――などを志望者本人に質問してみるといいでしょう」
(聞き手は松本治人)