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転職に役立つ後悔の心理学 反実的仮想思考・メタ認知 上市秀雄・筑波大准教授に聞く

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 五輪銀メダリストに「後悔」が多いワケ

 ――「後悔先に立たず」は必ずしも正しくはないわけですね。

 「心理学における『反実的仮想思考』も就活・転職に効果的です。『もし◎◎だったら××になっていたかもしれない』と、実際と異なるプロセス・結果の想像です。もっと良い結果が得られたはずだと考える上向きの仮想思考と、悪くならずに済んだと安心する下向きの仮想思考があります。五輪選手の発言を分析すると、メダルの色と後悔の度合いが微妙に違っています。競技終了後のインタビューで銅メダリストは自分自身が達成したことに多く言及し、銀メダリストは金メダリストと自らを比較して『私は△△ができなかった』と後悔のコメントが多いのです。上向きの仮想思考の結果です」

 「ただ上向きの反実的仮想思考は後悔を生むばかりではありません。私たちの行動をより良い方向に調節し、失敗経験からいち早く学習する要因になります。一般学生に対する実験では、初回のテスト後に悔やむ上向きの仮想思考が強い学生の方が、2回目のテストで点数をアップさせました」

 ――後悔する感情を回避し、精神的なダメージを小さくする方法はありませんか。

 「就活・転職のために最も重要なのは『メタ認知能力』を磨くことです。課題を自分が適切に行っているかどうかというモニタリング、問題の捉え方を変えられるコントロール、適切な対処法を知っているメタ認知的知識の3つの因子があります」

 「モニタリングは認知活動での気づき・感覚・予想・点検・評価などを指します。メタ認知能力が優れていると自分の性格・素行の傾向、さらに現在どのような状況・心理状態にあるかを第三者的に把握できます。コントロールは目標設定・計画立案・修正で、自分に都合の良い情報ばかりに頼る認知バイアスに陥ることなく、幅広く反対の意見まで耳を傾けられます」

 「後悔の感情を軽減するノウハウも欠かせません。現実に向き合うことは必要ですが、気持ちが落ち着くまで待った、自己正当化した、なるようにしかならないと開き直った、考えないようにした……なども後悔への対処法です。メタ認知能力が高い人は複数の手段を持っています。メタ認知能力の高い人の対処法は平均7.0個。低い人は5.6個という実験データがあります。さまざまな後悔対処法を、いつ・どのように・どの順番で使えば効果的かを適切に取捨選択しているのでしょう。私も自身の論文の査読で酷評されていると予測すると、しばらく放ってから読むようにしています」

 

 

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