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テレワーク3年目 しわ寄せに悩む中間管理職の心得 吉田幸弘リフレッシュコミュニケーションズ代表に聞く

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 新型コロナウイルス禍の収束の見通しは立たず、ウィズコロナ時代の経営はしばらく続きそうだ。テレワークが本格化してから3年目に入ってのマネジメントの課題を、人材育成コンサルタントの吉田幸弘・リフレッシュコミュニケーションズ代表に聞いた。

 「コロナ収束後もテレワークしたい」8割超

 日本生産性本部(東京・千代田)がまとめた「第8回 働く人の意識調査」(1月中旬に20歳以上の1100名を対象にネット調査)では、テレワーク実施率が過去最低の18.5%となった。特に大手・中堅企業、首都圏で低下したという。ただ、テレワーク実施企業で週3日以上テレワークを行う人は前回(2021年10月調査)の41.2%から53.0%に増加、コロナ禍収束後もテレワークを続けたいとの回答は初めて8 割を超えた。

 この調査結果を、吉田氏は「企業が新たな課題に対応できていない結果だ」と分析する。現在直面しているのは①同一企業内における生産性の格差拡大②内外のヨコのつながりが困難③管理職の負担増大が進行中――の3点だという。

 20年春にテレワークが急速に普及し始めた時は、業種別の向き・不向きに関心が集まった。IT企業ならば導入しやすいが、製造業や運輸業ではハードルが高いという見方だ。吉田氏は「今は同じ社内の営業部でうまく対応できても、管理部門では負担が大きくなっているケースが少なくない」と指摘する。テレワークの利点のひとつは、通勤時間がなく生産性が向上すること。営業担当者なら効率よく取引先と商談ができる。一方で「財務、総務部門では社内データを持ち出せず生産性が上がりにくい」と吉田氏。その課題を解決するには全社的なDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が必要だが、新たなシステム構築には計画・設計と予算が欠かせない。

 同じ部署でもテレワークにうまく対応できる社員といまだ慣れない部下で格差が出てくる。以前なら取引先との打ち合わせに上司が同行するなどして働きぶりも確認できたが、コロナ禍の最中では難しい。成果主義に徹して評価するほかないが、一朝一夕では従来の人事システムを変更できない。

 疲弊する中間管理職

 社内の人間関係に煩わされることなく、自分の業務に集中できるといったメリットも強調されるが、「同一社内で営業、企画、経理などヨコの情報交換がやりにくい」と吉田氏。気軽な相談や雑談でなく正式なオンライン会議を増やしても、微妙なニュアンスは伝わりにくい。「以前は同業他社のライバル同士でも業界全体の課題などを共有することができた。現在は難しい」という。

 テレワークの環境下では非対面型コミュニケーションの弱点を克服するために、さまざまなツール開発や「オンライン飲み会」などの工夫が相次いだ。「それでも対面型コミュニケーションに及ばない点が、どんどん表面化している」と吉田氏は話す。しわ寄せを受けているのが、課長クラスやチームリーダーら中間管理職だという。

 簡単な指示も、いちいちメールを出さねばならず、部下からのメールも多い。メールの処理で1日が終わることもある。しかし従来業務の延長線上で、新たなミッションを与えられたわけではないから、自分が疲弊していることに気がつかないことも多いという。

 管理職に7つの策

 吉田氏はテレワーク時の管理職が足元で心得ておくべき7つの策を示している。

 【1】コミュニケーションエラーへの対応

 指示したものと違った成果物が上がってきたり、一部が抜けたりするケースが増えている。伝えることと伝わることは違う。念のための確認事項を加えることが時間のムダを未然に防ぐ。ただメールが冗長になっては逆効果だ。できるだけ文章を短くすることをチーム全体でルール化することが有効

 【2】部下を叱るメールに入れる4つの内容

 以前は叱る時はメールでなく面談で指導するように助言していた。メールは受信する側の解釈次第で良薬にも毒薬にもなり、フォローの方法も難しいからだ。しかし今はそう言っていられない。叱責メールには次の内容を入れておくことを推奨したい。(1)ねぎらいの言葉(2)具体性な叱責の原因(3)改善のヒント(4)未来に向けてのひとこと

 【3】交流不足解消で視野や発想を広げる

 テレワークのため1人で仕事を完結してしまうケースが増えている。社内のコラボレーションが難しく、ふとしたアイデアを思いつくこともまれになっている。社内外問わずのオンライン勉強会への参加を勧める。ほかの業界のサービスや技術、3~5年後の業界予想のほか、歴史や哲学などの教養講座もよい。時には自分が主催者になって企画するのも効果的だ

 【4】空回りの部下のフォロー

 オフィスならば仕事の様子を観察でき適当にアドバイスできた。「手抜き」が上手な社員は成果を出す。上司は(1)週1回の1on1で日々何に時間を使っているのかを把握する(2)実現の可能性が高いものや成果が大きいものに集中させる(3)手抜きに罪悪感を持たせない――の順で指導すべきだ

 【5】仕事の期限に遅れる部下のフォロー

 テレワークでは上司の目が届かないせいか、仕事の期限に遅れる部下がいる。部下には何に時間を使ったかを残す時間記録簿の作成を提案したい。30分単位の大まかなもので毎日の提出は求めない。細かく要求すると、怒られないように適当に書くアリバイ作りになってしまうからだ。目的は時間の使い方のムラを自覚させるためで監視は生産性アップにつながらない

 【6】メール処理の時間を減らす

 管理職自身の生産性が低下する原因は(1)イライラが止まらない(2)メール処理の時間がかかる――などだ。カッとなったら6秒数える「6秒ルール」はビジネスパーソンの基本だろう。「即レス文化」から離れることを推奨したい。部下に対しては(1)19時以降は返信しない(2)14時までに受信したメールは17時までに返信し、14時以降は翌日の17時までに返信する(3)急ぎの対応が必要な場合はチャット連絡も入れるといった、新たなルールを設定するのが有効だ

 【7】テレワーク時の新人教育

 かつては本当の基礎だけ教え、先輩の仕事の様子を見よう見まねで覚えさせる、分からないところはその都度質問させる――のが通常だった。しかし22年春は通用しそうにない。新入社員に自ら業務の手順書やマニュアルを作成させることを勧める。さらにOJT研修中はオンラインで日報を提出させそれを部署で共有できると効果的だとしている。その日に覚えた仕事や気づきを書き込ませ、先輩らからのフィードバックを通じ新人の「見てくれている」という承認欲求を満たし、成長を促すことが重要だ 

 (松本治人)

 

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