なぜか「惹かれる企業」の7つのポジション

古い価値観や慣習に物申す「破壊者」に 博報堂 戦略CD/PRディレクター 菅 順史

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 “よりよい商品をつくっている”だけでなく、“よりよい社会をつくっている”企業として、社会から応援される存在でないと生き残れない。そんな危機感を抱く企業が増えています。消費者に選んでもらえなくなる、小売店で扱ってもらえなくなる、株主から資金調達できなくなる、優秀な人材が集まらなくなる、他企業とのアライアンスが結びづらくなる――。様々な理由から、社会から支持される企業になる重要性が高まっているのです。この連載では、書籍『なぜか「惹かれる企業」の7つのポジション』(日本経済新聞出版)をもとに、社会と向き合う技術を磨く「ソーシャル・ポジショニング」の方法を解説します。

 社会で起きている物事は、どの立場からみるかでみえ方がまったく変わります。そのため、自分たちはどの立場から社会と向き合い、よりよく変えていくのか。チーム内でポジションを共有していないと、一貫性のある姿勢や行動は生まれません。「7つのポジション」にあてはめながら、自分の会社はどこのポジションをとるべきかを考えて、チームメンバーと議論してみると面白いと思います。k今回は「破壊者」ポジションです。社会の古い価値観という大きな敵を設定してみましょう。

 「破壊者」ポジション/非合理な慣習や理不尽な固定観念を打ち破る

 「破壊者」ポジションとは、企業が提供している商品やサービスに関連する非合理な慣習や理不尽な固定観念を打ち破ることで、社会をよりよい方向へ前進させる企業のポジションです。

 地球環境や人口構造の変化、テクノロジーの進化などによって、社会が大きく変わっているなかで、時代遅れとなった価値観や制度などが生活者の息苦しさにつながっていることがあります。その息苦しさをみつけ出し、一個人では変えられない古い慣習や固定観念を企業の力で変えていくことを社会は期待しているのです。

 「生理は恥ずかしいものなのか?」― ソフィが投げかけた問い

 ここで、古い固定観念に疑問を投げかけ、世の中にうねりを起こした具体例をみてみましょう。

 ユニ・チャームの生理用品ブランド・ソフィが、「生理について気兼ねなく話せる社会をつくろう」という想いから始めた「#NoBagForMe」というプロジェクトです。生理中の負担を少しでも減らすためには、自分に合った生理ケアをすることが大切です。また、生理による体調不良をひとりで我慢してしまう女性も多く、生理や身体の悩みについて相談しやすい空気をつくる必要もあります。しかし、日本には「生理は隠すもの」という暗黙の了解があり、家族や友人とも話しづらく、生理や生理ケアに関する情報へのアクセスが限定されているのが実態でした。

 この社会通念を打ち破るために立ち上がったのがソフィです。

 「生理は隠すべきことなのか? 恥ずかしいことなのか?」という投げかけを世の中にするために、生理用品を茶色い紙袋に入れてみえないようにする慣習に着目。その背景にある、女性の生理は“隠すもの”という社会通念を打ち破ろうと立ち上がりました。生理品を買うときにレジで紙袋に入れられることが、生理は隠すものという社会通念を象徴しているとして、レジで「私は紙袋いりません」と言う選択肢を社会に投げかけたのです。合言葉は、「#NoBagForMe」です。

 もちろん、紙袋を断るのは選択肢のひとつであり、紙袋が必要と考える人の価値観を否定するものではありません。ただ、「生理は紙袋に入れて隠すべきものなのか?」という課題提起を、世の中に向けて行ったのです。当時、スーパーやコンビニなどでは、環境問題の観点から「レジ袋いりますか?」というやりとりが増え始めていました。この機運も捉え、「私は紙袋いりません」を合言葉に生理のタブー問題に切り込むこの活動は、メディアがこぞって取り上げました。

 SNSでも「生理は恥ずかしいものなのか?」「生理を隠す派? 隠さない派?」といった議論が生まれ、影響力のあるインフルエンサーが自分たちの意見を投稿。生理について気兼ねなく話せる社会機運をつくる後押しをしました。実際に、生理に関するSNS上での発話は増加したそうです。このプロジェクトにおいて、ソフィは商品の機能について語っていません。生理についてみんなが気兼ねなく話せる社会をつくることを目的に設定し、その障壁となっている「生理は隠すもの」という社会通念を打ち壊すことに活動をフォーカスしたのです。

 “当たり前”に疑問を投げかけてほしい―「黒船企業」への期待

 この「破壊者」ポジションと親和性が高いのが、「黒船企業」です。

 古い価値観を壊し、新しい価値観を投げかける活動は、少なからず対立や批判を生む可能性があります。本来であれば、対立する意見が上がることは悪いことではなく、社会が前進していくために必要なプロセスです。しかし、企業体質として対立が受け入れられなかったり、実際に不買運動につながったりすることも事実です。そこで、日本で「破壊者」として期待されやすいのが「黒船企業」です。

 最近、ハフポスト日本版が、同メディアが制作するネット番組において、1年を通じて出演者の男女比を同等にすることを宣言しました。海外をルーツにもつ同メディアは、多様な意見が求められる現在において、登場する専門家やコメンテーターに男性が多いことは“アンコンシャス・バイアス”を助長するのではないかという課題意識から、この宣言を出したそうです。

 アンコンシャス・バイアスとは、「ものの見方や捉え方の無意識での偏りや歪み」という意味です。無意識の偏りや歪みに気づくためには、外の目線が必要です。こうした黒船メディアの動きには、日本が無意識に持っている視点の偏りや歪みに立ち向かおうとする意志を感じます。

 

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