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NTT澤田社長、次世代通信支える南米哲学者の思想 自著「パラコンシステント・ワールド」を語る

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 現代の企業リーダーに求められる資質のひとつは「自分の言葉」で語ることだ。投資家や株主、取引先に向けて、心に刺さる言葉はトップ自ら紡ぐほかはない。さらに書籍という形をとれば広く一般社会に訴えることができ、未来の顧客や社員らの共感を得ることにもつながる。NTTの澤田純社長(6月24日に代表権のある会長に就任予定)は自らの言葉を持つ日本のリーダーのひとり。巨大グループの改革を進め、次世代通信規格「6G」時代の光技術を活用した次世代情報基盤構想「IOWN(アイオン)」の実現を目指す。近著の「パラコンシステント・ワールド」(NTT出版)の読みどころを澤田社長に聞いた。

 万能ではない科学技術、矛盾許容・同時実現を

 ――本書は通信革命の専門的な解説は抑え気味で、社長自身の歴史や技術に対する考察から、独自の経営観を展開させている点が特徴です。生物学者の福岡伸一氏との対談、山極寿一・前京大総長、出口康夫・京大教授との鼎談(ていだん)なども紹介しています。

 「NTTは次世代情報基盤構想『IOWN(アイオン)』に取り組んでいます。先端の光技術を駆使したスマートシステムは、未来の社会変革を伴うことを伝えたいと考えています。新たなテクノロジーを導入するには、それを支える哲学が必要です。科学技術が万能ではないことを認識し、新たな思想や科学、テクノロジーを模索するときに来ています」

IOWN(アイオン)
光通信技術を駆使した新しい通信インフラ構想。大容量、低遅延、低電力消費を実現し持続可能な社会の構築を目指す。サーバー空間上のデジタルツインコンピューティングやクラウド、ユーザーICTの一元化管理なども可能にする。NTTはこの基盤の上でMaaS(マース)、医療、教育などのサービスを提携企業とともに展開させる計画だ。

 ――書名の「パラコンシステント」は矛盾許容、同時実現などと訳し、異なるAとBを抱合しつつ双方をつなぐことを意味します。南米ペルーの哲学者が最初に用いたといいます。

 「皆さんの耳慣れない言葉ではあると思います。かつて自分が京大で学んだ土木工学はトレードオフの思想が基本です。『選択と集中』型の経営もAかBかを決めねばなりません。しかしAとBの同時実現を目指す第三の道、これをパラコンシステントと言います。デジタルかアナログか、ビジネスとしての事業性か公共性か、現場力か経営力か、中央集権か自律分散かなど、単純な二元論では答えが出せません。1つの粒と波長という両特性をもつ光技術で半導体を形成していく。それがIOWN構想の基本であり、同時実現の1つの例です」

 ――IOWN構想には、かつてのインターネット登場に匹敵しうる革新性と評価する声が出ています。ただ、技術革新を急ぎすぎると人々の思考や行動が枠にはまって画一的になる恐れはないですか。

 「IOWN構想は情報を光(アナログ)で扱います。つまり、自然を自然として扱うような考えです。自然はもともと多様性で成り立っています。このためIOWN構想は、むしろ多様性を伸長させると考えます。技術の進歩で経済の格差拡大や、ましてや生命の格差まで生じることはあってはならないと思います」

光半導体
電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換える半導体。シリコンに光を閉じ込めて通す道「光導波路」を形成し、より高速の光を使って情報処理する。NTTは爪先サイズのデバイス(光電融合デバイス)の試作品を完成させた。消費電力は100分の1、伝送容量は125倍、遅延は200分の1となる性能向上が目標。

 

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