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ソニーEVの製造業プラットフォーム 日本復活のカギ 小宮昌人・野村総合研究所コンサルタントに聞く

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 ソニーグループの電気自動車(EV)参入――。デジタルツイン(サイバー空間上に現実を再現)などの技術を駆使し、業種を超えた新たなビジネス展開が進んでいる。「ソニーのEV」で見えてくるのは、製造業プラットフォーマーを活用する同社の企業戦略だ。その一方で日本を支えてきたモノづくりの伝統は優位性を失いつつある。野村総合研究所の小宮昌人・グローバル製造業コンサルティング部コンサルタントは「日本の製造業はモノだけではなく技術を売るべきだ」と製造業プラットフォームビジネスへの転換を説く。

 ソニー、駆動部分は欧州の製造業プラットフォーマーに

 ――ソニーはEV事業で国際的な製造業プラットフォーマーを効率的に利用していると分析しています。

 「ソニーは、オーストリアの製造業プラットフォーマーで部品から車体全体までを製造するマグナ・シュタイヤーを通じて駆動部分の技術をアウトソースします。ソニーは自社の強みであるデザインやセンサー、エンターテインメントなどの車載システムのほか、次世代型移動サービス『MaaS(マース)』に関するソフト分野に集中する計画です。逆にマグナ側は、ソニーなどEV新規参入組を支える企業戦略をとっているのです」

 「製造業プラットフォーマーはモノづくりで培った技術やノウハウ、システムなどを提供します。GAFAがBtoC(消費者向け)プラットフォームならば、製造業プラットフォームはBtoB(事業者向け)で、ドイツのシーメンスやボッシュ等が自社技術・ノウハウを活用したプラットフォーム展開を進めています。従来と異なりデジタル技術でブラックボックス化するなど自社の競争力を維持して技術・ノウハウを売ることが可能になっています」

 「ソニー自身も『ものづくりサービス』として他社製造のデザイン提案、開発・設計・量産までを支援中です。ソニーから独立した『VAIO』(長野県安曇野市)は、アイボ製造のノウハウを生かしてトヨタ自動車や富士ソフト、バンダイなどからロボット製造を受託生産しています」

 ――その一方で伝統的な日本のものづくりは、ビジネスモデルとして既に後れていると指摘しています。

 「自動車、エレクトロニクスなどの分野で圧倒的な競争力を示していたものの、現在は存在感が薄れています。世界経済フォーラム(WEF)が製造業の先行モデルとして認定した世界の90工場のうち、日本国内は2工場のみで、ひとつは外資系です。日本は、もはや『モノづくり先進国』ではありません。新興国の台頭で価格面のみならず、品質面でも強烈なキャッチアップを受け苦戦しています。自動車部品メーカーは完成車メーカーと共同で部品設計し、自社工場のラインも合わせてきましたが、近年では新興国の製造受託企業(EMS)が代替するようにもなっています」

 「製造プロセスのデジタルツイン化などで、欧米企業は製造プロセスを標準化し、グローバル展開を効率的に進めています。日本企業は、ノウハウに属人的な部分が大きいためスピード面で遅れがちです。さらにハード製品がコモディティー化する中で、QCD(品質・コスト・納期)に強みを持ってきた日本企業が乗り遅れてしまった面があります」

 製造現場の『暗黙知』が新たな成長の糧に

 ――垂直型のモデルで部品から一貫生産していたモノづくりの伝統が逆に足かせになっているのですね。これまで培った技術力はデジタル時代にどう生かせるでしょうか。

 「熟練工の技法やコンマ秒単位の生産性向上など、限界までこだわってきた工法やライン技術を、デジタルツールでパッケージ展開できると考えます。モノづくりを行う企業に必要な技術の80%は、デジタルツインの活用、EMS企業の起用、ライン導入を支援する外部企業の採用などで調達できるようになってきています。しかし残り20%の製造現場の『暗黙知』などを獲得するのは困難です。各セクションの擦り合わせで培ってきたボトムアップ的な日本の技術を、トップダウン的な標準化を進めてきた大企業が求めています」

 

 

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