日経SDGsフォーラム

カカオ農家支援で豊かな食ひらけ 明治、無駄なく残さず栄養引き出す

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食事を始める時に使う「いただきます」。口に入るまでの食に携わる人々、自然の恵みから生まれる食材への感謝を込めて思いをはせる。果たして自然の先食いをしてはいないだろうか、どうやって作られているのだろうか、産地の人たちの暮らしはどんなものだろうか。食材の多くを海外に頼る日本ならなおさらだ。「何も無駄にしない」「何一つ残さない」。そして「栄養をもっと引き出す」。そんな世界観を行動原理にすべきだ。

 甘くておいしいチョコレートやココア。その原料、カカオについて我々はどれほど知っているのだろうか。フルーツであるカカオの樹にぶら下がるカカオポッドというラグビーボールほどの大きさの実の中に30~40粒のカカオ豆が白い果肉に包まれている。容積だとわずかおよそ1割に過ぎないのだ。産地はカカオベルトと呼ばれる、南北の緯度20度以内で年間の平均気温が27℃以上の高温多湿な場所に限られる。学名は神様の食べ物を意味する「テオブロマ カカオ」だ。

 そんな貴重なカカオをもっと大切に育て、無駄なく加工して産地にも恩恵が行き届くことを目的とした事業が、大手食品メーカーの明治で3月から始まった。事業成長と社会課題解決を目指した「NEW サステナブルアクション カカオ」だ。地球環境に十分に配慮し、生産農家から加工・物流・販売を経て生活者までバリューチェーンで結び、新たな栄養価値も提供する。

 背景にあるのはカカオの産地からの悲鳴だ。異常気象による収穫の不安定さ、労働力不足による児童労働の存在、森林の乱開発など、課題は山積する。明治は2006年から現地に足を運び、社会課題の解決の手助けや生産支援を行う「メイジ・カカオ・サポート」を展開して一定の成果を上げてきた。

 産地との対話を通して分かったことは、栽培や発酵法など技術指導だけでなく、より地域に根付いた学校教育、衛生管理、社会インフラの整備といった施策をしないことには本当の豊かな社会の実現は難しいということ。明治だけにとどまらず、生産国、コミュニティーなどと深く連携して「栽培技術と生活向上」の両面の支援を継続することの必要性だった。結果として、持続可能なカカオ生産が実現される。「CSR(企業の社会的責任)にとどまらず、CSV(共通価値の創造)になる」(松田克也社長)

 明治は26年度までに、農家支援を実施した地域で生産された「サステナブルカカオ豆」の調達比率100%を実現する。また、果肉や豆の皮を単に発酵のエネルギーや飼料、肥料、燃料に用いるだけでなく、カカオ豆の可能性を引き出すべく現地の大学などと研究を進める。新たな栄養食品の開発や新素材として非食品部門への活用を視野に入れている。「ひらけ、カカオ。」が合言葉だ。

 (編集委員 田中陽)

明治・松田克也社長「自然と地球がステークホルダー」

明治グループの創業精神の一つに「食の提供を通じて社会に貢献する」の考えに基づいた「栄養報国」があります。1916年の創業の頃は、十分なエネルギー源摂取のためのカロリーが意識された時代でした。今では心身の健康だけでなく、「安心した暮らし」「日々の充実」のための栄養であり、報国とは地球全体と命あるものを包含します。自然、地球がステークホルダーなのです。心身の健康を土台とした充実した人生、より良く生きるウェルネスを分かち合う社会の実現が求められています。一部の人間だけが豊かさを享受することは許されません。

食品の会社である明治は食品を通じて社会課題を解決してこそ存在意義が果たせます。第1弾としてカカオに着目し、これまでの概念、常識、尺度を変えてサステナブルな取り組みに挑戦することにしました。カカオの実のわずか1割しか使っていないことが良いはずがありません。事業成長と社会課題の解決は得てしてトレードオフになりがちですが、それをトレードオンにすることで産地と消費をウィンウィンの関係にします。新しい技術、知見によってカカオの実に独自の新しい価値を創造していきます。

日本人のたんぱく質摂取量が1950年代の水準にまで落ち込み、明らかに不足しています。健康寿命の延伸も課題です。昨年、グループスローガンとして「健康にアイデアを」を策定し、企業価値向上と豊かな社会づくりへの方向性を打ち出しました。今後はヨーグルトや牛乳など明治の事業領域を深耕し、発酵や酪農などの技術を磨き上げ、さらなるサステナブルな社会の実現のお手伝いをし、令和の時代の「栄養報国」を実践していきます。期待してください。
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