SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けてスポーツ界が動き出している。スポーツは人々にとって身近な存在なだけに、社会に貢献できる可能性は大きい。5月13日に開催された「スポーツとSDGs」をテーマにしたシンポジウムでは、バスケットボールのBリーグ、ラグビーのリーグワンが持続可能な社会のために取り組む事例を紹介。人々がつながり、豊かで持続可能な社会を築くためにスポーツができることなどについて、関係者や有識者らが意見を交わした。
※2022年5月13日のプログラム「日経SDGsフェス 日経SDGsフォーラム特別シンポジウム『スポーツの力が創る、持続可能な社会』」から、ショートスピーチ・特別講演・事例紹介・クロージングセッションをダイジェスト版でご紹介します。
ショートスピーチ 新しいラグビー、地域と共に
リーグワン 専務理事 東海林 一 氏
ジャパンラグビーリーグワンは24チームが参画し、今年から活動を開始した。20年以上の歴史を持つ、これまでのトップリーグと大きく変わったことは、企業スポーツから社会的価値を実現する存在への進化だ。
ラグビーチームもプロの視点で経営し、社会的価値を実現しなければ発展はあり得ない。選手は単なる競技者ではなく、リーグ価値の実現者に、サポート企業は価値を実現するパートナーとなる。「あなたの街から世界最高をつくろう」というビジョンには、地域に密着し、地域の皆さんと新しいラグビーの形をつくる思いを込めている。
リーグワンがやろうとしていることはSDGsそのものだ。ラグビーを「やる」ことにより健康の促進、人材育成を実現する。ラグビーを「見る」ことを通じて、よりよい街づくりにつなげる。そしてラグビーの「場を活用する」ことで、気候変動対策やジェンダー平等、リサイクルの推進に貢献する。SDGsの実現を図ることは、ラグビーの価値を高めることになる。競技力だけでなく、存在そのものとして世界最高のリーグをめざしていく。
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事例紹介 笑顔生み出す企画 次々と
リコー ブラックラムズ東京 ゼネラルマネージャー 西辻 勤 氏
ホストエリアの東京・世田谷区にある医療的ケア相談支援センターで、難病を抱えている方やご家族と交流している。近隣大学の学生に試合運営やプロモーションを体験する機会を提供し、ホームゲームを盛り上げる連携活動も行ってきた。スポーツの強みは笑顔を生み出す力、発信する力、人と人をつなぐ力だ。課題を持っている人たちへの協力の輪を広げる役割で、SDGsに貢献できることは多いはず。今後も世田谷区全体を巻き込んで関係を広げていきたい。
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス 東京ベイ浦安 ゼネラルマネージャー 内山 浩文 氏
教育、健康増進、地域活性、テクノロジーなど、スポーツの価値は多面体だ。さまざまなNPO法人や地域の企業との共創パートナーシップに力を入れ、多くの施策を連携して行ってきた。パートナー企業からお客様の楽しませ方を学ぶこともできており、有益だ。コロナ下では、遠隔操作できる分身ロボットを活用して、子供たちに観戦体験を提供する取り組みも行った。スポーツにはハブとなって企業や行政をつなぐ力がある。強い情報発信力と楽しいコンテンツデザインでSDGsに貢献していけるはずだ。
クボタ スピアーズ船橋・東京ベイ ゼネラルマネージャー 石川 充 氏
チームの活動で特徴的なのは、東京・江戸川区と協定を締結したことだ。区の各部門から豊富な施策アイデアをいただき、できることから形にしてきた。ビーチの清掃活動を行ったり、SDGsを「自分ごと」として体験できる企画をスタジアムで実施したりした。スポーツには人を引き寄せる力があり、楽しみながら参加するうちに人の意識や行動を変えることができる。一企業では点で終わる社会貢献が、スポーツと地域に関わることで線としてつながり、多面的になるのは魅力だ。