日経SDGsフェス

人々つなぎ、豊かに スポーツがアシスト(2) スポーツの力が創る、持続可能な社会 パネルディスカッション

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 SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けてスポーツ界が動き出している。スポーツは人々にとって身近な存在なだけに、社会に貢献できる可能性は大きい。5月13日に開催された「スポーツとSDGs」をテーマにしたシンポジウムでは、バスケットボールのBリーグ、ラグビーのリーグワンが持続可能な社会のために取り組む事例を紹介。人々がつながり、豊かで持続可能な社会を築くためにスポーツができることなどについて、関係者や有識者らが意見を交わした。

日本経済新聞社と日経BPは2022年5月9日~14日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する世界規模イベント「日経SDGsフェス」を開催いたしました。

※2022年5月13日のプログラム「日経SDGsフェス 日経SDGsフォーラム特別シンポジウム『スポーツの力が創る、持続可能な社会』」から、パネルディスカッションをダイジェスト版でご紹介します。

 パネルディスカッション 地域と連携、地方創生の核に

大阪大学大学院 教授 佐々木 勝 氏

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社スポーツビジネスグループ/シニアヴァイス プレジデント 公認会計士 里﨑 慎 氏

今治. 夢スポーツ 執行役員 氏家 翔太 氏

◆ コーディネーター 日経ESG エディター 相馬 隆宏

 (以下は各氏の敬称略)

 佐々木 専門の労働経済学の視点からスポーツの効果を研究している。経済学から見てもスポーツはSDGsの達成に貢献できる。スポーツ活動は、健康と福祉の実現に役立ち、男女平等にスポーツ参加の機会を与えることは、女性の意欲を高め、ジェンダーギャップの解消につながる。

 氏家 サッカークラブのFC今治の運営をする今治.夢スポーツで執行役員をしている。ここには「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という企業理念があり、サッカー以外に野外教育や環境教育などの事業を行っている。

 里﨑 監査法人を中核としたビジネスプロフェッショナルファームに所属しており、その中でスポーツビジネスを専門に扱う部署を立ち上げた。FC今治とは地域の社会課題を解決するパートナーとして共に活動している。SDGsの取り組みやスポーツが生む社会的価値は見えにくいため、SROI(Social Return on Investment)という指標を使って分析、可視化した。

 

 氏家 スポーツの地方創生への効果を考えると、競技の魅力以上に、それが人々を連携させることが大きいと思う。2023年1月、今治市内に新スタジアムができる予定だが、自治体、多数の企業や個人の出資、協力を得られた。サッカー好きでない方たちも含めて巻き込むことができるスポーツやクラブの力を感じる。

 佐々木 日本各地で地方創生の手段としてアリーナ建設が進んでいる。こうした場には多様な人々が集まり、経済が回るので非常に重要だと思う。今治のようにプロチームがあることはスポーツの付加価値を高めるが、それだけでなく地域の人々と連携することが大切になる。

 里﨑 FC今治の活動をSROIで分析し、予算を1としたときに世に生み出した価値を算出してみると、サッカークラブ運営事業は1・1倍、育成・普及事業は1・8倍、地域に貢献するホームタウン活動は2倍以上だった。全般的にクラブをハブとしてパートナー企業同士、住民同士をつなげる機能を地道につくっているところがうまくいっている印象があり、Jリーグのホームタウン活動がしっかりと価値を生み出していることが可視化された印象。

 氏家 試合のある日は、試合だけでなくいろいろな催しをしている。サッカー好きに限らず、地域の方々が集まりやすい場にすれば、高齢者もスタジアムに足を運んでくれる。来るといつもの仲間がいて、子供も含めた幅広い世代とコミュニティーが形成され、孤立しない。勝っても負けても感情の動きを楽しめる。それが高齢者の心身の健康に寄与していると感じる。

 佐々木 スポーツをした高齢者の方が要介護認定率は低く、介護期間も短くなることは明白だ。しかも1人でするより、他の人々と語らいながら運動する方が健康的。信頼、互恵関係、社会規範などに基づいた人々のつながりを社会資本といい、これが豊かなほど健康的といえる。それにより社会保障費や医療費が下がることも期待される。

 里﨑 こうしたスポーツの社会的価値を可視化すれば、企業は従来の広告宣伝価値以外の価値に対し、投資できるようになる。

 佐々木 企業はもっと健康に対する人的資本への投資をすべきだと思う。健康であるほど生産性は上がり、自然に賃金も上がる。

 氏家 入社してからスポンサーシップグループの名称をパートナーシップグループに変えた。企業をわれわれ単独ではできない地域課題や社会課題の解決に取り組むパートナーと考えたからだ。スポーツクラブのパートナーになることを考えている企業は何らかの連携を図るとよい。それは社会的価値を生み、将来さまざまな効果をもたらす可能性がある。まずはクラブの試合を見て、活動を知り、一緒に何ができるかを考える。われわれも最終的にはパートナーシップを通じてSDGsに貢献していきたい。

“世界の知”に学び、SDGsに対する理解を深める
2022年5月開催「日経SDGsフェス」の動画を無料公開

日本経済新聞社の「日経チャンネル」では、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授、日本女性初の国連事務次長である中満泉氏をはじめ、同イベントにご登壇くださった国内外の有識者らによる講演やシンポジウムを動画として無料公開しております。この機会に、ぜひ、ご視聴ください。ご視聴はこちらから
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