ビジネスに効く 伝わる文章術

読み手と書き手のギャップを意識して書こう 白鳥 和生

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 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会のデジタル化を加速しました。リモートワークや遠隔会議が定着し、コミュニケーションのあり方も一変。口頭で長々と話していても納得感を得るのは難しく、数字に基づいた資料をきちんと用意し、簡潔で要領を得た文章で伝わる工夫が求められています。本連載では『即!ビジネスで使える 新聞記者式 伝わる文章術』(CCCメディアハウス)をもとにビジネスに役立つ文章術をお伝えします。

 

◇  ◇  ◇

 「君の話(文章)は何を言っているのかわからない」

 「結局何が言いたいんだ?」

 「その話は根拠があるのか?」

 「そのデータは、誰が調べた(言っている)んだ」

 筆者が駆け出しの新聞記者だったときに先輩から何度も言われた言葉です。新聞記者ですから、「事例がない」「データがない」「根拠が弱い」と指摘されることは、信頼される記事ではないということです。

 ビジネスの文章は、書くこと自体が目的ではありません。特に企画・提案書は、相手にこちらが思うように動いてもらうことが目的です。だから、〝きれいな文章〟が〝良い文章〟とは限りません。文章は「自分が読む立場である場合、それを読みたいか?」を常に考える習慣をつけたいものです。読まれない文章は、書き手の「書きたいこと」と読み手の「読みたいこと」にギャップがあるのです。特に企画書や提案書は、読み手がどんな性格でどんな立場にあり、どんな課題を持っているのかを事前にリサーチすることが必要になります。

 「君の文章は結局、何が言いたいんだ?」と言われるのは、読み手にあなたの意図が伝わっていないからです。あなた自身が、この文章で何を伝えたいのかが定まっていないのが根本原因です。

 何を伝える?目的の明確化が第一歩

 どんな文章も、書き手がいるように読み手がいます。日記のような文章は別として、ビジネス文章は読み手が誰なのかをきちんと想定し、その人に何を伝えるのかという目的を考えることが第一歩になります。

 ビジネス文章の目的は業務の遂行に関する「判断」を行うための材料提供です。

 上司や裁量権を持つ担当者が、判断したり、行動を起こそうと思ったりしてもらうための材料を、過不足なく用意する必要があります。

 ターゲットと目的がはっきりすれば、文章の方向性が固まります。すると、文章が速く書けるようになります。

 文章には「型」があり、伝えるためには「コツ」があります。その種類は多くありません。

 「結論」「主張」を先に

 「結論」あるいは「主張」を先に書き、それを補足する理由や客観的事実を重要な順に書いていく――ただそれだけです。

 「えっ、それだけ?」という声が聞こえてきそうですが、本当にそうなんです。簡単ですよね。私自身、学生時代の国語の成績はほめられたものではありませんでした。新聞記者になりたての頃は「ベタ記事(見出しが1段の短い記事)」のような短い文章を書くのに半日以上四苦八苦しました。しかし、「型」を覚えたから30年以上も新聞社に勤められているのです。

 特にビジネスの現場で川端康成のような名文家やスティーブ・ジョブズのような名スピーカーになる必要はないのです。私たちは彼らとは違った「近道」を見つけ、「簡単に伝わる」文章のテクニックを身につけたいものです。その「近道」として、新聞記者のテクニックが役に立つのです。

 長い文章ほど価値がある、というのは錯覚です。短い文章で伝わるなら、それに越したことはありません。文章の長さは目的に応じて使い分ければよいのです。

 トヨタ自動車では、報告書や提案書をA3もしくはA4判用紙1枚にまとめる文化があるといわれます。まさに合理的な企業文化を映しています。日本経済新聞社でも、以前同様な指導がありました。忙しい経営幹部に何枚もの文章を読んでもらうのは現実的ではありませんから。

 情報があふれかえる現代にあって、「読むか読まないか」は一瞬で判断されます。パッと見て「読みやすそう」と思ってもらえることはますます重要になってきているのです。

 「文章は読んでもらえないもの」という前提で、コンパクトにまとめましょう。

 

 

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