どこでもオフィスの時代

リモート・リーダーシップ なぜ日本企業で育たないか 山口周

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 オフィスに出社しないで自宅で仕事をするリモートワークが新たな働き方として定着しました。この過程でわかったのは多くの仕事が「どこでもできる」ということでした。この動きはさらに進み、オフィスから離れた地域に住んだり、一定期間リゾート地などで働くワーケーションへの関心が高まっています。働く人が自分の好きな場所で働けることは、実は企業にとっても有益なことが多いといいます。この連載では、一般社団法人みつめる旅著『どこでもオフィスの時代 人生の質が劇的に上がるワーケーション超入門』(日本経済新聞出版)をもとに、好きな場所で働くことのメリットを働く人、企業それぞれの側から解説していきます。最終回は、リモートワークが当たり前になってもオフィス出社にこだわる日本企業を危惧する山口周氏のコラム「『リモート・リーダーシップ』が育たない日本の未来」を紹介します。

 

 「リモート・リーダーシップ」が育たない日本の未来

 リモートワークが当たり前になった時代に、会社の側はどうするのか?という問題も重要です。コロナ前と同じように「毎日会社に来い」と社員に求めるのか、それとも「週に1回だけ出社すればいいよ」とするのか。どちらの方向に舵を切るのか、会社の主体的なwill(意思)、さらに言えば、社員の幸福をどんなふうに考えているのかという価値観が問われる時代になりつつあります。

 この点に関しては、すでに会社間で多様性が生まれています。相変わらず東京の丸の内や大手町に大きなオフィスを構えて「毎日会社に来い」と言っている企業もあれば、地方やクラウド上にオフィスを移して「出社しなくていい」「どこに住んでもいい」というメッセージを社員に発している企業もあります。米フェイスブックはパンデミック収束後もリモートワークを認めると発表しましたし、日本企業では富士通がリモートワークを活用して2022年度末までにオフィス規模を50%ほどに縮小すると打ち出しています。

 労働市場における競争という意味では、同じお給料であれば、「毎日会社に来い」と要求する企業よりも、「出社しなくていい」「どこに住んでもいい」という企業の方が選ばれるでしょう。つまり社員が住む場所・働く場所を自由に選べるかどうかで、採用競争力に大きな差がつくわけです。さらに言えば、リモートワークが当たり前の時代に、通勤を強いることの倫理的問題もあります。東京の場合、会社員の平均的な通勤時間は片道約50分とされています。往復で約2時間ですが、この時間に対して報酬は払われていません。

 言ってしまえば、hidden work(隠された仕事)なのです。これだけ職場におけるダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍が声高に叫ばれている時代に、毎日2時間も無報酬の仕事を強いることは、企業のモラルとしてどうなのだろう?と首を傾げずにはいられません。

 マネジメントという点では、オフィスのように1か所に社員が集まる方が断然ラクです。リモートワークで働く部下に対して望むような成果を出してもらえるようマネジメントするには、相当高いスキルが求められます。実際、日本の大企業のマネジャークラスの中でそこまで高度なマネジメントスキルを持ち合わせている人は、1~2割しかいないと言われています。大半の人は、目の前にいる部下に対して場当たり的に指示を出しながらわちゃわちゃと業務を進めています。

 日本において遠隔で人を動かす「リモート・リーダーシップ」が根づかなかった理由は、地理的条件もあると考えています。日本は国土が狭いので、物理的に会おうと思えばすぐに会えてしまいます。これに対して、国内で時差が設定されているアメリカのような広い国では、ある程度のポジションまで上がると部下と会わずにマネジメントすることが当たり前とされています。

 

 

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