日経SDGsフェス

難局でこそ「取り残さない」 行動と共創、加速の時(5) 日経SDGsフォーラムシンポジウム 起業家による討論・「人的資本」巡る討論

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 ロシアによるウクライナ侵攻や収束が見通せない新型コロナウイルス感染症、気候変動問題など社会は多くの困難に直面している。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)達成へ向け、今なすべきことは何か。日本経済新聞社と日経BPは5月10日、オンラインとリアルのハイブリッド方式で「日経SDGsフォーラムシンポジウム」を開催。産官学の識者に加え若き起業家や高校生も登壇し、難局にあっても「誰一人取り残さない」ため行動と共創の加速を訴えた。

日本経済新聞社と日経BPは2022年5月9日~14日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する世界規模イベント「日経SDGsフェス」を開催いたしました。

※2022年5月10日のプログラム「日経SDGsフェス 日経SDGsフォーラムシンポジウム」から、2つの「討論」をダイジェスト版でご紹介します。

 討論 課題解決 “諦めない”が大切

◆ パネリスト(左から)
DG TAKANO 代表取締役 高野 雅彰 氏
MNC New York/Be-A Japan 代表取締役CEO 山本 未奈子 氏
※両氏とも以下は敬称略

◆ モデレーター 日経xwoman 編集委員(肩書は登壇時)羽生 祥子

 羽生 お二人は未来の風景を変えるプロジェクトを手がけている。起業した理由は何か。

 高野 世の中にないものをつくって社会課題を解決しようと考え、各地で深刻化する水不足問題に行き着いた。節水と洗浄を両立させるために当社が開発した製品が、節水ノズル「バブル90」だ。蛇口の先端に取り付けることで最大節水率95%を実現し、洗浄力も上げられる。

 山本 当社は女性特有の悩みを極限まで最小化したいと考える会社だ。当社調べでは、女性の8割以上がサニタリーの悩みを抱えているが、その用品は60年間ほとんど進化していない。当社が開発したのが超吸収型サニタリーショーツ「Bé―A」だ。約125ミリリットルの吸水力と快適なはき心地を実現した。

 羽生 製品の開発や普及の経緯について教えてほしい。

 高野 バブル90の開発は苦労の連続だったが、家業の町工場の技術を使い1年で完成できた。地球環境負荷を減らし、水道代も削減できるため売れない理由がないと思っていたが、日本には当時まだ節水のニーズがなく、5年間売れなかった。海外の展示会で高い評価を得られ、その後日本でも広まった。バブル90の1年間の総節水量は、大阪市民の1カ月間の水の使用量を上回る。今では大手外食チェーンなど多くの企業に採用されている。

 山本 われわれが納得できる品質の吸水ショーツを開発しようと決意。尿漏れショーツの技術を持つ工場と組み、様々なこだわりを詰めて2年半後に完成にこぎつけた。このショーツを使うことで、使い捨てのサニタリーアイテムなどに使われるプラスチックの大幅な削減にもつながる。新しい選択肢として女性のQOL(生活の質)を向上させるべくクラウドファンディングを実施したところ、目標金額100万円に対して、45日間で1億円が集まった。

 羽生 次の展開は。

 高野 国によって蛇口の仕様やキッチンの使い方は異なる。そのため、シリコンバレーのデザイン会社と共同で、バブル90を内蔵した世界中で使えるユニバーサルデザインの蛇口を開発した。技術を適切にデザインしてイノベーションを起こし、今の時代に合う水道を作りキッチン事情を変えたい。絶対無理だと思うことでも、どうすれば問題を解決できるか諦めずに考え続けることが大切だ。

 山本 当社の吸水ショーツも世界に持っていけると確信している。今後は、まずは使い捨てサニタリー用品の利用が多いアジアから商品を広げていき、子どもたちへの教育にも力を入れ、次世代に向けて波を広げていきたいと考えている。

 

◇     ◇     ◇

 討論 人的資本、ゴールから逆算を

◆ パネリスト(左から)
コモンズ投信創業者 会長 シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役CEО 渋沢 健 氏
アサヒグループホールディングス 執行役員 Head of Sustainability 近藤 佳代子 氏
セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 経営推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサー 釣流 まゆみ 氏

◆ モデレーター 日経BP 総合研究所 主席研究員 小林 暢子

 ※各氏とも以下は敬称略

 小林 人的資本という言葉の重要性がクローズアップされているのはどうしてなのか。

 渋沢 「人は財産」ではなく人的資本という言葉が使われるのは、人は会社の所有物ではなく価値を共創するステークホルダーだと考えられるからではないか。新しい資本主義が目指すべきなのは社会の変革であり、人的資本の向上があるからこそ成長と分配の好循環ができる。

 近藤 サステナビリティー戦略を遂行するための経営基盤として、当社は人的資本の高度化を掲げている。サステナビリティー戦略と人的資本を同期化させることでサステナビリティー経営を加速させ、実効性が高まることにつながる。

 釣流 サステナブル経営においては、コーポレートガバナンスの強化と同時に、経営戦略と連動した人財政策が大切だ。今年3月に改定した重点課題では、「多様な人々が活躍できる社会を実現」「働きがい・働きやすさの向上」を新たに設定した。

 小林 人的資本の向上は従業員や取引先らステークホルダーにどんなプラスをもたらすか。

 近藤 人を大切にする、社会に貢献する価値観に共感、賛同する若い世代を中心に、人々が集まり、社会課題解決に取り組むことによって、持続可能な社会の実現につながる。従業員のエンゲージメントも向上し、投資家の期待にも応えられる。

 釣流 店舗は社会の公器であり、地域の中で必要な存在になることが大事だ。当社は地域マーチャンダイジング(MD)を大切にしているが、個人が働いて良かったと思えることがサステナビリティーにつながる。

 渋沢 これからの主役は世界的に最も人口が多いミレニアル・Z世代だ。そんな中で昭和時代の価値観そのままの企業では非常に人的資本のリスクが高い。企業の認識次第で今後かなりの差異が生じるのではないか。

 小林 人的資本に関する情報開示で必要なことは何か。

 渋沢 サステナビリティーの基準を定める流れがグローバルに広まっている。人的資本の測定と可視化も今後10年で必ず出てくるだろうが、日本の企業も「WHAT」と「HOW」だけでなく「WHY」を腹落ちさせて参画することが重要だ。

 近藤 人権などの取り組みを定量的に測定するのは難しい。なぜ課題に取り組むのか、何を目指すのか、事業と社会インパクトをどう生み出し企業価値につなげるのか、骨太なストーリーラインの作成・実行が必要だ。

 釣流 サステナビリティーの世界で私が学んだのは、目指す姿を定めてバックキャスティングすることだ。人的資本をどう持っていくか、具体的なゴールイメージを共有すべきだ。

“世界の知”に学び、SDGsに対する理解を深める
2022年5月開催「日経SDGsフェス」の動画を無料公開

日本経済新聞社の「日経チャンネル」では、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授、日本女性初の国連事務次長である中満泉氏をはじめ、同イベントにご登壇くださった国内外の有識者らによる講演やシンポジウムを動画として無料公開しております。この機会に、ぜひ、ご視聴ください。ご視聴はこちらから

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