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ベテラン・営業こそDXの宝 データで磨く長年の「勘」 マクロミル 渋谷智之氏(下)

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 職場への導入が勢いづくデジタルトランスフォーメーション(DX)だが、営業のベテラン勢や現場のたたき上げからは冷ややかに受け止められることもあるようだ。数字や分析に「現実離れ」「一面的」と懐疑的なビジネスパーソンも少なくないが、こうした反応は誤解もはらむ。DXやデータ分析のコンサルティング経験が豊富な、マクロミルの渋谷智之氏は「現場で育まれた勘や経験知にデータで磨きをかけるのが望ましい生かし方」とアドバイスする。著書『データ利活用の教科書』(マクロミルとの共著、翔泳社)を入り口に、DXやデータ活用で「ワンチーム」になる方法を教わった。

 DXに積極的な人と後ろ向きな人の間には無視できない温度差があるようだ。経営者が発する「全社一丸となってDXに前のめり」という掛け声は必ずしも社内に行き渡っていない。渋谷氏は「全員のモチベーションが同じであることは難しく、濃淡があるのは仕方がない。『自分は文系』といった苦手意識を持つ人もいる。ただ、上手に使えば、有益な解決策を得られることも多いので、むやみに拒絶するような反応は得策ではない。利点を理解したうえで、課題解決や業務改善に生かしてほしい」と、緩やかなワンチームを勧める。

 ミドルやシニアの働き手がDXに後ろ向きな態度を見せがちなのは、デジタル技術への苦手意識が働くせいだろう。自分たちの強みにしてきたノウハウや経験知を、DXやデータ分析に置き換えていくような不安感もネガティブな態度につながりやすい。しかし、「自分には関係ない」「得意な人がやればいい」といった逃げ口上は新たな学びを遠ざける。渋谷氏は「これから先、DXと無縁の職場は考えにくくなっていく。どうせ学ぶのなら早いほうが楽」と早めのスキル習得を促す。

 「自分は文系出身だったし、業務も数値系ではなかったから、自分の知見は役に立たない」。こんな思い込みを抱く営業系職場のベテランも少なくないという。だが、渋谷氏は「全くの勘違い。貴重な知見が『宝の持ち腐れ』になりかねない」と、発想の転換を求める。むしろ、「データサイエンティストに代表される、数値・分析系の専門家ばかりがプロジェクトを引っ張るのは、つまずきの原因になりやすい」と、現場の知恵を巻き込む取り組みを勧める。

 昔から企業の経営判断では、「KKD(経験、勘、度胸)」が頼りにされてきた。昨今のDXやデータドリブン(データを重んじる考え方)の流れは、KKDを「過去の遺物」とし、その置き換えを図るかのように感じる人もいるだろう。しかし、渋谷氏は「もったいない」と、安易な「KKD軽視」を戒める。考えようによっては、「勘」は多様な経験に裏付けられた「生身のデータドリブン」ともいえる。勘に頼りすぎるのは危ういが、頭ごなしに「根拠が薄い」と否定してかかるのも惜しい。

 

 

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