日経SDGsフォーラム

時間かけ 暮らしの空間創る SDGs、鳥の視野と虫の視点で

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2030年にSDGs(持続可能な開発目標)を達成するには、鳥の視野と虫の視点が必要だ。広く長期的な視野で社会を変えていく目標を掲げ、具体的な取り組みは身近な視点でできることから手をつけていく。これは時間をかけて人々が暮らす空間を一つずつ創っていく不動産ビジネスに重なるといえよう。

 CO2排出削減 小水力発電強み

 2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする政府目標の達成に向け、不動産業界でも脱炭素への取り組みが加速している。オフィスや商業施設の二酸化炭素(CO2)の排出量は全体の2割近くを占めており、業界を挙げたカーボンゼロへの取り組みは、日本の排出削減を後押しする。

 不動産大手のヒューリックは、SDGsに関連して30年までに達成する2つの目標を掲げた。その一つが二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることだ。従来は50年を目標にしていたが、大幅に前倒しした。保有するビルなどで使う電気を30年にはすべて自前でつくった再生可能エネルギーで賄う方針で、各地に発電施設の開設を急いでいる。

 再生エネ発電の開発は、水素の実用化や蓄電池の性能向上が進むまで待つ向きが少なくない。しかし、東京都が新築住宅に太陽光発電の設置を義務付けることを検討するなど、時代の流れは明白だ。環境変化に柔軟に対応し、素早く行動するという経営方針の下、現時点で活用できるものとして太陽光と小水力による発電施設の開発に取り組み始めた。

 小水力発電まで手掛ける企業はそう多くない。日中に電力使用量が多くなるオフィスビルだけなら太陽光発電でも対応しやすいが、夜間に電力を多く使うホテルなども保有している。小水力なら夜間も発電でき、電源の多様化が進めば、電力需要の変動にも対応しやすくなる。

 30年までに達成するもう一つの目標は耐震化だ。物件は駅から5分圏内で、1フロア400~500坪以下の中堅・中小企業向けオフィスビルで多くが東京にある。建て替え時などに岩盤の強さ、液状化の課題などを調べ、建築基準法の1.25倍以上の強度にして首都直下地震に耐えうる性能を持たせる。

 入居すれば、中小企業でも、駅に近く、震度7に耐えられ、使用電力をすべて再生エネで賄う「RE100」を達成できるようになる。さらにセキュリティー対策の強化や、富士山噴火による降灰対策として電源設備への対応なども進めており、中小企業に様々な面で安心安全な環境を提供できる。

 日本企業の99%は中堅・中小企業だ。SDGsや脱炭素では中小企業の取り組みの遅れが課題とされており、中小企業への支援は日本全体を底上げすることにつながろう。

 (編集委員 斉藤徹弥)

時代に即応「ほかがやらないことを」――
 不動産業は時間がかかるものです。建て替えや開発は5年先を見ないといけません。いかに先を読むか。そしてできるところからいかに早く手をつけるか。合言葉は「変革とスピード」です。
 よく旅をします。とりわけ立山は空気が澄み気持ちがいい。だが自然環境は脇を甘くすると、あっという間に汚れてしまいます。12年前、長期計画を作る中で、10年後のヒューリックが優先すべきものとして、これからは環境問題だと考えたのです。
 やるからには、だれでもできることより、高い目標にチャレンジすることが大事です。再生可能エネルギーを買ってくるのは簡単だが、それ自体を増やしていかないと本当の意味でカーボンゼロにはならない。今できる行動として太陽光と小水力による発電を始めました。
 地震対策も大きな課題です。当社の建物は東京に集中しており、また命に関わる建物を提供している責任がありますので、安心・安全を合言葉に2030年までにすべての保有建物の耐震化を進めています。この間、仮に大きな地震が起きた場合でも倒れず使い続けることができる高耐震ビルの取得も行っています。地震の影響を補い、耐震化を終えるまでの時間を買っているのです。
 カーボンゼロの目標を前倒しした結果、年間投資額は2倍になりました。ヒューリックの経常利益率は20%台を維持しており、1人当たりの経常利益は5億円くらい(単体ベース)ですが、SDGsの取り組みは収益が上がらないとできません。収益を上げたうえで、環境問題、ガバナンス、ジェンダー平等に取り組みます。また、企業の社会的責任(CSR)としては、社会やお客さま、地元、株主、社員を大事にしていきます。あらゆるものを高いレベルに引き上げたい。ほかがやらないことをやります。

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