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「007」の世界が現実に 空飛ぶ車が23年にも事業化へ 中村洋明・大阪府立大客員教授に聞く

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 空の移動革命に日本勢も本格参入する。主役となるのは「空飛ぶクルマ」だ。ホンダは9月30日、垂直に離着陸して飛行する「eVTOL」(イーブイトール、電動垂直離着陸機)の開発に着手したと発表した。米欧中が先行する分野に、ものづくりの技術力を生かして追撃する。新型コロナウイルスの感染拡大で受けた打撃を跳ね返す活力になるかもしれない。航空機業界に長く携わってきた元住友精密工業専務の中村洋明・大阪府立大客員教授に聞いた。

 ホンダ・トヨタが意欲

 ――米ハリウッド映画「007シリーズ」に登場した近未来技術のシーンが現実化しますね。ホンダは小型ビジネスジェット機で培った技術などを応用して参入する構想です。ホンダの「eVTOL」は短時間での中長距離移動が可能で、トヨタ自動車も米ベンチャー企業と提携して意欲を見せています。トヨタ出身者らが設立した「スカイドライブ」(東京・新宿)も開発中です。

 「空飛ぶクルマの市場規模は、2040年には米欧アジアなど世界で110兆円規模との試算もあります。このジャンルは飛行機タイプ、ヘリコプタータイプ、推力方向が変換できるチルトタイプがあります。現時点ではヘリコプタータイプの『eVTOL』が本命です。電動で離着陸が可能なこと、騒音・振動が減少すること、滑走路が不要なこと――などのメリットがあります」 

 ――世界的にみて日本は後発組なものの、航空機業界が進めている脱・化石燃料の動きが追い風になると最新著『新・航空機産業のすべて』(日本経済新聞出版)で指摘しています。世界の温暖化ガスの排出量の2%を占める航空業界で、温暖化ガスの排出量の99%はジェット燃料が占めるとのことです。

 「航空機由来の温暖化ガスを放置しておくと、50年には現在の倍以上の排出量になるとの予測があります。騒音などの削減や、油空圧システムなどの整備費用軽減にも、航空機の電動化が求められています。日本のメーカーは電動航空機の開発に必要なバッテリー、電動モーター、パワーエレクトロニクス部品などの技術分野で大きな強みを持っています。機体軽量化のための炭素繊維複合材の開発も日本メーカーが国際的にトップです」

 「イスラエルのスタートアップ企業は22年にバッテリー駆動の電動モーターを搭載した小型機の納入を開始します。乗客数は最大9人。水素電池駆動の電動モーター実用機も23年から商業運航が始まる予定です。10~20人の乗客数で航続距離は約800キロです。20年代に小型プロペラ機や多くのシステム機器で電動化が進み、空飛ぶクルマの開発促進に寄与する構図です」 

 ――「eVTOL」は世界で300以上の開発プロジェクトが進行中とされています。どのような業種が参入していますか。

 「16年に米ウーバー・テクノロジーズが空のライドシェア構想を発表してから開発に拍車がかかりました。各国では欧州のエアバスや米ボーイング、米ベル・ヘリコプターなどの航空機メーカーから、独ポルシェ、韓国の現代自動車、中国の吉利汽車などの自動車メーカーなどです。これらに加えて米欧中の多くのベンチャー企業が参画しています。大手が資本参加や提携、共同開発、委託研究などで開発資金面を支える構図がよく見られます。ポルシェとボーイングが手を組むようなケースもあります」

 「やや出遅れ気味ながら、日本ではトヨタとスカイドライブを筆頭にホンダ、川崎重工業、テトラ・アビエーション(東京・文京)、プロドローン(名古屋市)、エアロネクスト(東京・渋谷)などですね」

 

 

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