なぜか「惹かれる企業」の7つのポジション

課題を抱えている生活者に寄り添う「応援者」に 博報堂 戦略CD/PRディレクター 菅 順史

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 “よりよい商品をつくっている”だけでなく、“よりよい社会をつくっている”企業として、社会から応援される存在でないと生き残れない。そんな危機感を抱く企業が増えています。消費者に選んでもらえなくなる、小売店で扱ってもらえなくなる、株主から資金調達できなくなる、優秀な人材が集まらなくなる、他企業とのアライアンスが結びづらくなる――。様々な理由から、社会から支持される企業になる重要性が高まっているのです。この連載では、書籍『なぜか「惹かれる企業」の7つのポジション』(日本経済新聞出版)をもとに、社会と向き合う技術を磨く「ソーシャル・ポジショニング」の方法を解説します。

 社会で起きている物事は、どの立場からみるかでみえ方がまったく変わります。そのため、自分たちはどの立場から社会と向き合い、よりよく変えていくのか。チーム内でポジションを共有していないと、一貫性のある姿勢や行動は生まれません。「7つのポジション」にあてはめながら、自分の会社はどこのポジションをとるべきかを考えて、チームメンバーと議論してみると面白いと思います。メンバー間の認識の違いに気づいたり、全員が信じられる価値を発見したりすることができるはずです。第1回は「応援者」ポジションです。

 「応援者」ポジション/「みんなの課題」として社会に問題提起

 「応援者」ポジションとは、誰のために存在しているのかを明確に示してその人たちに寄り添い、勇気づけたりサポートしたりする企業のポジションです。応援している生活者と深くつながることはもちろんですが、その応援する企業の姿勢や意義に対して社会から賛同してもらい、支持される企業になります。

 ただし、自社の顧客をただ応援するだけでは社会からの支持は得られません。それは、ほぼすべての企業が顧客のために何らかの事業を展開していて、少なからず誰かの応援をしているためです。単に顧客を応援しているというメッセージでは、「他社と同じ」になってしまいます。

 では、どうすれば「応援者」のポジションとして社会から応援される企業になれるのでしょうか。

 ひとつの方法は、社会の変化の中で人知れず困っている生活者の課題にいち早く気づき、それを社会全体で向き合うべき課題として提起し、解決するための行動を起こすことです。

 ここ数年で企業は、「いまの社会で何を問題とするべきなのか」という議題を世の中に投げかけるオピニオン・リーダーとしての役割も期待されるようになりました。社会をよりよい方向へ前進させるために、自社の商品やサービスで生活者の悩みや不安を解決するだけでなく、社会全体で課題の解決に取り組む流れをつくることも期待されているのです。

 いま積み残されている社会課題の多くは、一企業の1つの商品やサービスで解決できるものではありません。だからこそ、「これを使うことで課題を解決できる」と“答え”を提示するのではなく、「この課題に、みんなで向き合おう」と、立ち向かうべき“問い”を提起して、周囲も巻き込みながら行動していくことが、社会から求められているのです。

 社会学者の富永京子氏は、著書『みんなのわがまま入門』(左右社)の中で、「人々が多様化したことで一人ひとりの苦しみや傷が個人化されていて、だからこそ隣の人と簡単にその痛みを分かち合えない」ことを指摘したうえで、「ただ一方で、たしかに社会に弱い立場の人はいて、その人たちの苦しみや痛みは、目にみえない形でまだ存在している」と述べています。

 多様化が進む社会において、自分の悩みや不安が他の人にも共通するものなのかがわからず、声を上げられない人たちがいます。そのような、社会に気づかれていない悩みや不安から目をそらさず、企業の力によって「みんなの課題」として社会に問題提起することも、社会をよくするひとつの行動です。こうした行動の積み重ねによって、「応援者」というポジションが形成され、社会に必要な存在として認識されていくのです。

 商品やサービスだけでは解決できなくても、企業にできること、期待されていることはたくさんあります。企業が大切にしている企業文化や価値観を軸に、世の中で気づかれていない課題を提起していくこともそのひとつです。

 気をつけなければならないのは、「言葉」だけでなく「行動」につなげることです。口先だけの応援は偽善と受け止められ、むしろ嫌われてしまいます。応援する人の悩みを解決する具体的な「行動」を継続する意志があってはじめて、「応援者」のポジションに立つことができるのです。

 

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