日経SDGsフェス

脱炭素、次世代技術で実現 水素の活用 官民一丸で(2) 日経 社会イノベーションフォーラム水素シンポジウム 講演

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 2050年カーボンニュートラルの実現に向け再生可能エネルギーの活用が広がる中、使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素が次世代エネルギーとして注目されている。水素エネルギーの実用化には製造や輸送、保管などの課題を新技術で解決していく必要がある。5月11日に東京・丸の内で開催した「日経社会イノベーションフォーラム」(主催=日本経済新聞社、日経BP)では自治体の水素エネルギーの導入事例や企業の技術動向を紹介。パネルディスカッションでは官民一体で普及を進める重要性の認識で一致した。

日本経済新聞社と日経BPは2022年5月9日~14日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する世界規模イベント「日経SDGsフェス」を開催いたしました。

※2022年5月11日のプログラム「日経SDGsフェス 日経 社会イノベーションフォーラム水素シンポジウム『水素が切り拓く、脱炭素社会 〜他業種連携で生み出すエコシステム〜』」から、企業と自治体による講演をダイジェスト版でご紹介します。

 企業講演 「究極の動力源」信念貫く

 岩谷産業 専務執行役員 技術・エンジニアリング本部長

 福島 洋 氏

 岩谷産業は液化石油ガス(LPG)を主とする総合エネルギー、産業ガスや機械、さらにはPET樹脂や資源開発事業を展開している。創業者・岩谷直治の「水素が究極のエネルギーである」という信念の下、1941年には水素を販売。液化水素では国内唯一のサプライヤーとなった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH-1ロケットの燃料を供給し、現在は国内3カ所で苛性ソーダや液化天然ガス(LNG)から製造した水素をローリーで運搬。水素ステーションに届けるまで一気通貫で行っている。

 今後は海外の褐炭やLNGに二酸化炭素(CO2)の貯留技術を加えた製法、再生可能エネルギーを使った製法で水素をつくりたい。グリーンイノベーション基金の液化水素サプライチェーンに参加し、海外で製造した水素を日本に運び込む荷役手順や管理を担当。日本―オーストラリア間の実証実験にも加わった。

 国内でCO2排出の少ない水素製造法を検討するとともに、発電、輸送、産業などの新たな需要にも応えていく。

 水素ステーションの普及にも力を注ぐ。日本にある約150カ所のステーションの3分の1を建設、運営するほか、米カリフォルニアでも展開している。

 水素を早い時期から手がけてきた当社は水素社会を築く一員として最大限の貢献をしたい。

 

◇     ◇     ◇

 企業講演 極低温技術で供給網構築

 川崎重工業 常務執行役員 水素戦略本部長

 原田 英一 氏

 カーボンニュートラル実現に向け、世界40カ国が水素を将来の重要エネルギーとして政策を打ち出している。日本政府は2030年の電源構成において水素・アンモニアで1%を目標に掲げた。

 水素の優れた点は使用時に二酸化炭素(CO2)を出さない〝究極のクリーンエネルギー〟である点と、多様な国や資源から調達できるためエネルギー安全保障にも役立つ点だ。また水素は関連する産業分野の裾野が広く、産業振興、雇用創出にもつながる。日本政府の目標は意欲的で、年間の水素導入量を現在の約200万トンから50年には2000万トン規模を掲げている。

 川崎重工業は10年代から水素に着目し、技術や製品開発に取り組んできた。水素のサプライチェーンの上流から下流までのコア技術を一社で保有する世界唯一の企業と自負している。

 液化天然ガスで培ってきた海上輸送での極低温技術や、30年以上にわたる液化水素のハンドリング技術を駆使。水素の安定した大量供給を目指す国際サプライチェーン構築に取り組む。パイロット実証では、水素をオーストラリアで製造、当社建造で世界初の液化水素運搬船で日本に運び、神戸の液化水素荷役ターミナルのタンクで貯蔵することに成功した。今後は商用化実証に取り組みコスト競争力も高め、水素社会実現を支えていく。

 

◇     ◇     ◇

 企業講演 P2Gソリューションを提供

 東芝エネルギーシステムズ エネルギーアグリゲーション事業部 水素エネルギー事業統括

 佐薙 徳寿 氏

 東芝は再エネ、二酸化炭素(CO2)回収、蓄電池、水素などカーボンニュートラルに貢献する様々なソリューションの開発と社会実装を進めている。水素は電力だけでなく産業、運輸、業務・家庭など、ほとんどの部門で活用が期待できるキーテクノロジー。水素を製造するP2G(パワー・ツー・ガス)ソリューションの提供を進めていく。

 P2Gは再エネの導入促進や系統の調整力、余剰電力を使った安価な水素製造、安全保障面でのエネルギー国産化率向上といった多くのメリットがある。2020年に世界最大規模の水素エネルギーシステム、福島水素エネルギー研究フィールド「FH2R」が開所した。目的は水素製造、貯蔵、供給、電力系統の需給バランス調整などだ。製造能力は燃料電池車1万台相当の年900トン。水素の製造装置は最大10メガワットだ。

 P2Gのキーとなるのは水電解。FH2Rではアルカリ型の水電解を使用する。最近では固体高分子を使うPEM型も増えている。東芝では次世代の技術として期待される固体酸化物を使った高温水蒸気分解のSOECを03年から開発してきた。SOECは動作温度がセ氏約700度と高いが、他の方式に比べ効率が約30%高いのが特徴。排熱利用も可能で、水素の普及に向けて製造コストの削減にも貢献できる。

 

◇     ◇     ◇

 企業講演 都市利用へ水素蓄エネを実用化

 清水建設 設計本部主席設計長

 堀部 孝一 氏

 清水建設は再エネの地産地消が可能で、建物や街区の脱炭素化・事業継続計画(BCP)に貢献するグリーン水素利用システム「Hydro Q-BiC」を2016年に産業技術総合研究所と共同開発した。

 同システムは再エネ余剰電力で水電気分解して水素を製造、吸蔵合金に貯蔵。必要に応じて燃料電池で水素発電して建物に電力供給するものだ。新開発の吸蔵合金は消防法・高圧ガス保安法などの適用を受けず安全性が高いのが特徴だ。将来的な街区・都市への利用を見据え、建物内に安全かつコンパクトに水素貯蔵する技術と、自動制御で水素運用をする技術を既に実用化している。

 再エネの普及には蓄エネ技術が不可欠だ。水素蓄エネは自然放電しないためエネルギーロスがなく長期貯蔵が可能。建物単体利用だけでなく大規模建築や街区レベルでの蓄エネやBCP電源にも有利に対応する。

 21年には「ZEB」認証を取得した当社北陸支店新社屋に出力2000キロワット時のHydro Q-BiCを国内で初めて建物内に実用設置。1年の運用を通じ、再エネの余剰電力を活用して安全に建物内で水素を製造・貯蔵し、発電にも利用できることを確認した。安全でコンパクトな同システムは都市部で再エネを地産地消する水素蓄エネに向けた一つの方策だと考える。

 

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。