ヘルステックサミット2021特集

ライフサイエンスのオープンイノベーション拠点を構築 LINK‐J、東京・日本橋で産官学の垣根を越えた連携の機会を創出

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ヘルステックやライフサイエンスに携わる様々な組織・企業が参画した「ヘルステックサミット2021」。2016年に三井不動産が中心となって立ち上げた一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK‐J)も本イベントに協賛・参加し、講演などを行った。LINK-Jは、わが国の名だたるライフサイエンス企業が集結する東京・日本橋と大阪を舞台に、ライフサイエンスにおけるオープンイノベーション拠点創出に取り組んでいる。21年に設立5周年を迎えた同組織のあゆみを振り返りながら、日本のライフサイエンス産業の展望について、同組織プロデューサー朝比奈宏氏と境夢見氏に聞いた。

 江戸以来続く「創薬の街」のレガシー活用 

 朝比奈 日本橋を創業の地とする三井不動産は、長く日本橋エリアのまちづくりに携わってきた。8年ほど前、「産業創造」をコンセプトに、このエリアの優位性をさらに伸ばすための打ち手はないかと考える中で、江戸時代から薬種問屋などが多く集結し、「薬の街」として積み上げてきたレガシーに注目。ライフサイエンスに関わる新たな価値創出を目指すオープンイノベーション拠点を日本橋に構築するという構想を抱くようになった。

 その構想を具現化させるべく、2016年に三井不動産のほか、アカデミアや産業界の方々と連携し、LINK-J(一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン)を設立した。

  LINK-Jは、ライフサイエンス産業のプレーヤー同士の連携によるエコシステム構築や、オープンイノベーション創出を促進する組織だ。医療や創薬などのヘルスケアに加え、未病改善や健康長寿に貢献するソリューションなどの研究開発に携わる様々な方が参画できる。民間企業やアカデミア、公的機関やベンチャー企業のほか、個人の研究者など、産官学の垣根を越え、また個人と組織の垣根をも越えて、あらゆるプレーヤーが会員となっている。各国大使館や欧米製薬企業の業界団体など、海外の会員も多く、世界とつながることができるのもLINK-Jの強みだ。

 20年9月には、日本橋と同じく古くから薬種問屋が集積し、「薬の街」としての歴史を歩んできた大阪・道修町至近で「LINK-J WEST」を始動させた。東と西に拠点を構築することでエコシステムはさらに充実し、オープンイノベーションの可能性は一層広がる。

 コミュニティ構築、ライフサイエンスにおけるエコシステムを目指す

  LINK-Jの主な役割は、ライフサイエンス領域のプレーヤー同士をつなぐコミュニティ構築だ。会員同士のネットワーキングやマッチング、情報交換のためのイベントの開催などを行う。コロナ禍においても、リアルとオンラインを使い分けながら357件(2020年実績)のイベントを開催した。また起業家支援プログラム「ZENTECH DOJO NIHONBASHI」をはじめ、学生や若手研究者等を対象とした育成・支援プログラムも精力的に共催している。

 三井不動産は、デベロッパーならではの知見を活用した「場」の整備に貢献する。日本橋では薬品などを使用した研究開発に対応できるシェア型ウェットラボのほか、カンファレンスルームなどを備えたライフサイエンスビルシリーズを15拠点展開(22年1月現在)。大阪・道修町では「ライフサイエンスハブウエスト」を運営しているほか、24年春には、賃貸ウェットラボやオフィスが一体となった施設を大阪・中之島にオープンさせる予定だ。日本橋、道修町共に、今後も継続的に拠点を拡充させていく中で、葛西、新木場、柏の葉エリアでの賃貸ウェットラボの開設も進めている。

 朝比奈 こうした場づくりの成果もあり、東京と大阪で143のテナントを新たに誘致(22年1月現在)した。スタートアップや、アントレプレナー育成に注力する大学などにとって、長い時間をかけてライフサイエンスの知を蓄積してきた日本橋と道修町は、研究開発に励む環境として非常に魅力的だ。これらのエリアに拠点を置く大手企業からも、将来性ある企業や人財と日常的に交流できる環境整備が進むことを歓迎されている。拠点を都市部に築いたことの意味も大きく、スピーディーな商談や高度人財の獲得にも貢献している。

 「場」の整備に加え、三井不動産はライフサイエンス系スタートアップなどを出資対象とするファンドへのLP出資を通じたスタートアップ支援も行っている。将来のエコシステム強化を見据えた先行投資だ。

 多様な会員を抱え 情報発信やネットワーキング支援に強み

 朝比奈 LINK-Jの2022年1月現在の会員数は525だ。設立から5年が経って会員数が増えただけでなく、製薬企業や医療機器メーカーのほか、スタートアップやベンチャーキャピタル、国内外の研究機関などが会員に名を連ねるなど、会員の層も厚みを増している。

 会員数増加と共に運営を担う我々の知識やノウハウも増え、もう一歩踏み込んだ施策ができる環境が整ってきた。今後、オープンイノベーション創出に資するエコシステム構築に向け、LINK-Jはさらなる進化を遂げていく。

  未来を見据えた進化の一歩目として取り組んでいるのが会員の情報発信等を支える新サービスの展開だ。ライフサイエンス領域には高度な技術力や先進的な事業アイデアはあるものの、情報発信力に課題を抱えるプレーヤーが多い。そこで21年より、会員が閲覧できるホームページにプレスリリースを投稿できるサービスを開始。また今後、「創薬」や「再生医療」など、テーマごとに関心のある会員が集まり、情報交換ができるイベントも定期的に開催して会員同士の交流の機会拡大を図る。さらに、新事業やソリューションなどを発信するイベントを会員とLINK-Jが共同で開催することも可能になった。この5年間でLINK-Jが蓄積してきた「出会いの場を創造するノウハウ」を生かす施策だ。

 朝比奈 ライフサイエンス産業のプレーヤーをつなぐコミュニティや場づくりを担うにあたっては、「第三者であること」の意義は非常に大きいと実感している。ライフサイエンス市場におけるしがらみや利害関係が一切なく、まちづくりの文脈からLINK-J事業を推進する三井不動産だからこそ、多様な企業や組織をつなぐ役割を担える。

  コロナ禍では健康の価値が見直され、ライフサイエンス産業育成の重要性も改めて共有された。イノベーション創出には多くの時間やコスト、手間を要するが、将来にわたり健やかな暮らしを維持するためには、様々な強みを有するプレーヤー同士が連携し、腰を据えて研究開発に臨める環境が必要だ。LINK-Jは今後もオープンイノベーション創出に資するコミュニティ構築に全力を注ぐ。

 朝比奈 5年間の経験から得たノウハウを、次の5年、10年、さらにその先へとつなげていきたい。今後、スタートアップや若手の育成プログラムも一層拡充させていく方針だ。志を同じくする企業や組織があれば、ライフサイエンスのオープンイノベーション拠点構築に向け、共に歩む仲間となってほしい。

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