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「多様性と包摂」欠く日本企業 女性取締役3割超で効果 保田隆明・慶応大教授に聞く(下)

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 世界で約4000兆円とされるESG(環境・社会・企業統治)資金に企業は無関心ではいられないだろう。しかし、どう呼び込むかは当然ながら一筋縄ではいかない。米シリコンバレーに滞在しESGによる企業変革を研究した慶応大学の保田隆明・政策総合学部教授は「投資家が特に注目する非財務情報は人的資本(ヒューマンキャピタル)のマネジメント」と指摘する。

 新型コロナウイルスの流行で社員の困難な状況への適応力が、収益維持に大きく影響することが明らかになった。保田教授はカギを握るのはダイバーシティー&インクルージョン(D&I、多様性と包摂)だと説く。「働きがいも経済成長も」は2030年までの国際目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の目標8。目標5には「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられている。ESG投資の呼び込みにも欠かせない、D&Iの推進を中心に日本企業の課題や取り組むべきことを聞いた。

 評価がまちまちな日本企業も

 ――ESG評価が高い企業の共通点を分析しています。

 「ESG時代にはリスクをとって投資する積極性が必要です。『花形・金のなる木・問題児・負け犬』の概念を使い事業を示すプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)でみると、ESGを見据えた新規事業は市場成長率は高いものの占有率は低い『問題児』です。しかし、現時点で安定したキャッシュフローを生み出してくれる『金のなる木』はESGの尺度で徐々に時代遅れになる可能性があります。問題児を高成長・高占有率の『花形』に育て上げれば企業として先行者利得を稼ぐことになります」

 ――代表的な世界のESG評価機関でも日本企業への評価はまちまちなケースがみられます。

 「米マサチューセッツ工科大(MIT)は専門プロジェクトで、ESGの主要な6機関の評価の食い違いを分析しています。高スコアで各機関の評価がほぼ同じ世界の25社は米アップルや蘭ハイネケン、日東電工、エーザイなどです。一方、評価が割れた25社の中には米インテルなどとともに、ホンダや日本たばこ産業(JT)など日本の6社が入っています。各機関で重視する項目が異なるからです」

 「日本企業の場合、環境対応を進めているものの、自分たちには当たり前の行為ゆえに情報開示していない項目が結構あります。節水や水の再利用、商品パッケージの素材や再利用可能性なども数値で示す必要があります。『S(社会)』の領域で日本の企業にマイナスに働いているのは、D&Iの遅れです。『G(企業統治)』は日本でコーポレートガバナンスコード(企業統治指針)が制定され、情報開示が始まっていますが、海外企業に比べて一層の改善の余地がありそうです」

 

 

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