金融DXサミット2021

テクノロジー活用し、金融機関の競争力向上に資するDX ――日本マイクロソフトが見据える金融の未来

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 金融業界特化型クラウドサービス「Microsoft Cloud for Financial Services」の提供や、フィンテック・インシュアテック領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援のための協業プログラム「Microsoft Enterprise Accelerator – Fintech/Insurtech」の開始など、金融機関のDX推進に力を注ぐ日本マイクロソフト。金融業界の現状の課題をいかに分析し、未来にどんな希望を見出しているのか。同社業務執行役員・金融イノベーション本部長の藤井達人氏が「金融DX/SUM」(主催:日本経済新聞社)で行なった講演の内容を紹介する。

 自律型サービスの実現に向け 金融業界全体が進化していく

 長引く低金利による収益の悪化や非金融領域のプレーヤーの参入などにより、金融業界は変化している。危機的状況の中、ますます重要となるのがテクノロジーだ。収益改善や、顧客の利便性を重視したカスタマーセントリックなサービスの実現といった課題を解決するにはDXが欠かせない。

 今後の金融サービスの変革の方向性は大きく4つある。金融の在り方そのものに多大な影響を与えると予見されるのが、オープンバンキングやオープンインシュアランスだ。API連携を通じ、金融機関や保険会社が持つ顧客データを第三者企業に公開することは、異業種との連携や協業のハードルを下げ、既成概念や常識を打ち壊すような金融サービスの開発・提供を加速させるだろう。また、顧客一人ひとりに最適なサービスを提供することでロイヤリティーを向上させる動きがさらに進むという意味では、超パーソナライズされた体験の提供も重要なキーワードとなる。それと関連して、データに基づく戦略決定、つまりデータインテリジェンスの重要性も増す。究極的には、自律型サービスの実現に向け、業界全体が進化していく未来が描ける。企業財務を自律的に改善するようなサービスの実現が広く社会から要請されるようになるだろう。

 当社はこうしたトレンドを把握した上で、金融機関のモダナイゼーション(情報基盤の現代化)やDXを支援する製品を提供。また、それらを活用して、デジタルバンキングのアーキテクチャも定義している。

 先進的かつ洗練された機能を実装した 金融業界特化型のクラウドサービス提供

 当社のデジタルバンキングのアーキテクチャは、ユーザーとのオムニチャネルのコンタクトや、システム間のシームレスな連携を実現すべく、APIやデータプラットフォーム、SOE(System of Engagement、ユーザーとのエンゲージメントを高めるためのシステム)などをパブリッククラウド上で展開できるように構築している。 

 このアーキテクチャを活用し、今年5月、石川県金沢市に本店を構える地銀・北國銀行がMicrosoft Azure上で稼働する勘定系システム「BankVision on Azure」の稼働を開始させた。パブリッククラウド上で稼働する勘定系システムの国内第一号事例だ。

 あらゆるビジネス アプリケーションによって使用されるデータを安全に保存し、管理できるDataverseに対応していることも、当社が構築するデジタルバンキングのアーキテクチャの特長だ。その中のCommon Data Modelを活用し、異なるシステム間で同じデータスキーマ(構造)を共有することで、システム間の互換性を高めることができる。例えばパートナー企業がソリューションを開発する際にも、Common Data Modelを通じてデータスキーマを共有すれば、開発期間を短縮できるだけでなく、開発後のデータ分析もスムーズに行える。

 金融業界のDXをさらに強力に支援すべく、今年11月より金融業界特化型クラウドサービス「Microsoft Cloud for Financial Services」の提供を米国で開始する(日本市場での提供時期は未定)。ユーザーのデータを統合・分析して顧客体験を改善する「統合化された顧客プロファイル機能」や、金融機関への申し込み手続きを簡略化する「カスタマー オンボーディング機能」など、4つの機能を実装。Microsoft AzureやMicrosoft Dynamicsなどをフル活用し、機能の先進性と洗練性にこだわっている。

 様々な強みを有する企業と連携し 金融のDX支援するエコシステム形成

 金融機関とパートナーシップを締結し、協同でDXを推進することにも積極的に取り組んでいる。

 今年6月、投資銀行モルガン・スタンレーと複数年のDXパートナーシップ契約を締結。顧客体験の改善に資するデジタルサービスをクラウドベースで開発する体制構築などを支援する。同行は今後、複数の事業領域においてMicrosoft Cloud for Financial Servicesを導入することが決定している。

 また現在、生命保険大手AXAと協働でヘルスケアプラットフォームの構築に取り組んでいる。病院の検索や実際の通院、薬の処方、完治後の健康増進といったヘルスケア体験をシームレスにつなぐべく、医療機関や製薬会社、自治体などが参加するプラットフォームを構築する。プラットフォームの構築や運営には、当社が開発したヘルスケア業界向けクラウドサービスを活用する。

 数歩先の未来を先取りした取り組みとしては、テクノロジーを通じ、環境に配慮した金融を実現する「グリーンフィンテック」系のデジタルバンクの事例が挙げられる。当社は、イタリアのFlowe(フロウェ)というデジタルバンクのコンサルティングを行っている。Floweは、ユーザーにサステナビリティーへの貢献を呼びかけるような金融サービスを提供している。再生木材から作られたデビットカードの発行や、決済によって発生するCO2(二酸化炭素)排出量の可視化などだ。CO2排出量が一定以上たまると特定地域に植樹できるオプションも用意。アプリを通じて自分が植樹した木の生育状況も確認できる。いわゆるナッジのように、望ましい行動をとるよう促すプラットフォームを志向して開発された、新しい形のデジタルバンクだ。

 今後は金融領域のみならず、様々な強みを有する企業と連携し、金融のDXを支援するエコシステムを形成したい。その思いで今年1月、フィンテック・インシュアテック領域における新たな協業プログラム「Microsoft Enterprise Accelerator – Fintech/Insurtech」を開始した。このプログラムを通じ、当社が有するテクノロジーや顧客リレーションと、パートナー企業が有するソリューションやビジネスアイデアを掛け合わせて、金融機関のDXをさらに強力に推進していく。

 

 

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