ビジネスに効く 伝わる文章術

ビジネス文章、ファクト・数字・ロジックで納得感 白鳥 和生

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 比較することで理解を容易に

 もう一つ重要なのは、比較をするクセをつけることです。

 例えば、日本に歯科医院は何軒あるか。答えは約7万軒ですが、7万という数字だけでは、これが多いのか少ないのかさっぱりわかりません。しかし、約5万5000店というコンビニエンスストアの店舗数や、約2万4000局という郵便局の数が頭にあると、いかに歯科医院が多いのかがつかめます。

 比較を容易にするために、基準となる常識的な数字は覚えておきたいものです。日本のGDP(国内総生産)は約550兆円。1兆円という数字は、GDPのおよそ550分の1であり、これはなかなかのスケールを持っていることがわかります。

 このように大きな数字を知っていることは、プレゼンなどでも効果があります。「日本の生産年齢人口は7600万人ですから、したがって……」「ウォルマートの売上高60兆円と比較すると……」などと説明すれば、「すごいな、コイツ」と納得してもらえるかもしれません。

 ロジックがなければ誤った結論も

 しかし、ファクトだけを個別に理解しても、それらの間のつながり(ロジック)がなければ、重大な抜け漏れや見逃しが発生し、誤った結論を導いてしまいかねません。伝わる文章のためにはファクト、数字、ロジックの3つの要素が必要です。

 では論理的な文章を書くにはどうすればよいでしょうか?その訓練で最もいいのは、他人に読んでもらうことです。

  外資系コンサルタントの世界では、論理的な話の組み立てを「雲・雨・傘」理論と呼んでいるそうです。「雲が垂れ込めてきた」という事実に対して、「雨が降りそうだ」という解釈があり、それに対して「傘を用意しよう」という行動が論理的に導き出されるというものです。

 「雲・雨・傘」の理論は因果関係を表しています。「○○だから□□であり、□□だから△△である」という筋道を立てた情報の伝え方です。

 「雲・雨・傘」の基本的な構造は、「前提」「推論」「結論」です。

 前提とは、一般的な法則や具体的な事実を指します。

 推論とは、前提から結論に導くための理由付けです。前提と結論をつなぐ役割があり、ここがロジックの肝になります。

 結論は、その人の最も主張したいことであり、読み手にアクションを起こさせる要素です。

 次の例はあまりにも有名です。

 前提 = 人間はみな死ぬ。

 推論 = ソクラテスは人間である。

 結論 = ソクラテスは死ぬ。

 この例では、前提である「人間はみな死ぬ」は普遍的なルールです。推論では「ソクラテスは人間である」という個別の例を当てはめて結論につなげています。これは「演繹(えんえき)的推論」と呼ばれ、「三段論法」ともいわれます。ロジックの中で、最も基本となる考え方です。前提が正しく推論も正しければ、正しい結論が導き出されます。

 一方で、「○○の原因(結果)には□□や■■などがあり、□□の原因(結果)には△△と▲▲がある」といった、漏れと重複がないように情報を伝える方法があります。いくつかの個別事象を積み上げ、そこから結論として一般法則、無理なく言えそうな結論を導くものです。

 次のような例があてはまります。

 前提① = 私が初めて見たハクチョウは白かった。

 前提② = きのう見たハクチョウの群れは白かった。

 結論 = 今、目の前にいる白い鳥はハクチョウである。

 この場合、ファクトとデータが多いほど結論の正確性が高まります。私が見てきたハクチョウが1羽よりも10羽、さらには100羽の方が正確性は高くなります。つまり、結論は100%確実ではないということです。

 通常は、ある程度の確率でその結論が正しければ、それを使うことに問題はありません。ただ、少数の事実から一般化すると結論を誤ってしまう場合があることを頭の片隅に置いておくべきでしょう。Aさん・21歳独身女性、Bさん・28歳独身女性、Cさん・24歳独身女性が、「この商品を買いたい」と言っている場合、「20代独身女性はこの商品を買いたい」との結論を導き出してもいいでしょう。とはいえ、「女性全体」「(男女問わず)20代」がこの商品を買いたいと考えているとも言えます。

 ハクチョウの例と20代独身女性の例は、先に説明した演繹的推論に対して、「帰納的推論」と呼びます。二つを組み合わせると、情報を論理的かつ効率よく伝えることができます。

 一方、漏れや重複がないかをチェックする「MECE(ミーシー)」という手法があります。M=Mutually(互いに)、E=Exclusive(重複せずに)、C=Collectively(全体的に)、E=Exhaustive(漏れがないように)の略で、「モレなく、ダブりなく」考える概念です。

 「ダブリはないがモレあり」だとすべてを検証できずに、今まで気づかなかった新しい発想や答えを逃してしまう原因になります。

 「モレはないがダブリあり」では効率を阻害し、時間内に最善の答えにたどり着けませんし、能力や時間の配分も非合理になってしまいます。

 「モレあり、ダブリあり」は問題外ですが、思いつくままにアイデアを出していく場合は、よく「モレあり、ダブリあり」の状態になります。

 文章を書く際も、今まで発想が及ばなかった、漏れている部分を網羅的に考えることはとても重要です。重複したところばかりを考えていても発想は広がりません。「モレなく、ダブりなく」、全体的な視野が大切になります。

 「データ=ファクト」だとうのみにするのは危険です。データの中にはファクト(事実)ではなくオピニオン(意見)を収集している場合が往々にしてあるからです。

 例えば、法人営業(B to Bマーケティング)において、見込み顧客リストが100件あったとします。100件存在するのは事実ですが、とりあえずすべてをリストアップした100件か、すでに取引があったり、顧客になり得なかったりする会社を除いた上での100件かによって、意味合いは変わります。言葉を定義できていない中で数えられた数字は、正確にはファクトと言えないものになってしまうのです。

 

 

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