ビジネスに効く 伝わる文章術

ビジネス文章、ファクト・数字・ロジックで納得感 白鳥 和生

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 共通認識生む数字

 ビジネス文章に説得力を持たせる「近道」は、数字を使うことです。数字を使うことで、誤解なく情報が共有でき、正確な共通認識が生まれます。「なるべく早く」と言われても、人によっては認識に開きがあるはずです。「3日後」「1週間後」などと数字を使えば間違いは起きません。

 『ファクトフルネス』(日経BP社)は、思い込みにとらわれず、数字と事実で真実を見極めようとする態度の重要性を説きました。ベストセラーになったのは、同書の主張に納得感があったからでしょう。説得力のある主張は読む人や聞く人に納得感を与え、人を動かす〝武器〟になります。

 数字は客観的事実(ファクト)であり、相手に文句を言わせないパワーを持っています。

 さらに納得感や説得力を高めるためには、相手(読み手や聞き手)が持つ「ものさし」を利用することです。だれでも育った背景や学んだ分野によってそれぞれの判断基準を持っています。言い換えれば、その人がピンとくる指標や単位を使うことで「伝わる文章」に仕上げるのです。

 農業を営んでいる人なら「1反」の広さはわかるかもしれませんが、住宅関係の人なら300坪といった方がわかりやすい。平方メートルなら991.74平方メートル。小中学生なら学校のプール(25メートル)6個分、畳600枚分といったらよいかもしれません。ビジネスでは、動いてほしい相手が重視している指標で伝える工夫が求められます。

 数学が苦手な人は多いでしょう。数字を扱うといっても特別なセンスは必要ありません。かくいう私も、中学校で習う一次関数や連立方程式も危うい感じです。

 数学はなぜ苦手意識を持たれやすいのでしょうか。それは、見えないものを扱っているからです。数字は数の概念をシンボルにしたもので、数には実際に触れることはできません。だからこそ、身近なものに結びつけてリアリティーを持たせることが大切です。

 数字はたくさん見比べてみる必要があります。「100%の利用者が『満足』と回答」「広告費に換算すると1億円」など、とてつもなく大きな経済効果に対しては批判的に見ることも大事です。話題づくりのために経済効果の数字を作っている、などと客観的に見るのです。

 ビジネスの世界では、「文系だから数字に弱いのは仕方ない」という言い訳は通用しません。それに、「理系だから数字に強い」というのも本当でしょうか。

 あえて言えば、数学と数字は違います。受験数学とは違う「仕事の数字」を使いこなせているかが重要になります。仕事の数字とは、例えば売上高、営業利益や売上高営業利益率、原価率、値入率、粗利益率、損益分岐点、市場占拠率(シェア)といったものが考えられるでしょう。

 家具専門店チェーン、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は、為替相場など景気予測に長けていることで知られます。成果を上げている経営者、現場リーダーは目のつけどころが違い、数字を生かす勘所を知っています。 

 理系、文系というのも関係なしです。なぜなら、足し算、引き算、かけ算、割り算の四則演算だけを理解しておけば、数字力は鍛えられるからです。

 特に威力を発揮するのは割り算です。

 売り上げ100億円の会社が2社あったとします。一方は社員1万人、もう一方は100人だとすれば、社員1人当たりの売り上げは全然違います。

 総額に意味がない場合もあり、「1人当たり」「1個当たり」に直してみてはじめて意味が出てきます。

 物事の実態がリアルにつかめないときは、とりあえず割ってみる。そういう感覚を持つことが本連載で言っている数学的思考です。

 

 

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