SDGs

中堅ベンチャー、ESG資金呼び込む決め手は「PE」 保田隆明・慶応大教授に聞く(上)

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 「社会貢献のためにリターンを犠牲にする投資家はいない」

 ――投資家はどうみていますか。

 「日本の生命保険協会が毎年上場企業と機関投資家に実施しているアンケート調査では、ESG投資がリターン向上につながるとみる投資家が約3割存在します。リターンとの関係は不明確との回答が8%、リターンが犠牲になるとの見方は1%でした。石油メジャーのエクソンモービルは2021年の株主総会で、クリーンエネルギーへの転換が遅すぎると主張するアクティビスト(物言う株主)ファンドに会社側が敗北しました。クリーンエネルギーに詳しい社外取締役候補をファンド側が提案し、カリフォルニア州教職員退職年金基金など大手機関投資家が、こぞって賛成したからです。このアクティビストファンド自身が保有していたエクソンモービル株は(発行済み株式数の)わずか0.02%でしたが、ESG重視の主張が過半数の賛成票を集めたのです」

 「ただ、社会貢献のためにリターンの犠牲を厭(いと)わない投資家は存在しません。食品大手の仏ダノンは、乳製品に占める植物由来食品を大幅に引き上げる方針を示すなど、先駆的なESG経営を推進してきました。しかし、株価パフォーマンスの不振などを理由に21年に最高経営責任者(CEO)が更迭されました。『ダノンの取り組みは数年早かった』などと言われました」

 ――未上場企業がESG資金を呼び込むノウハウはありますか。

 「日本企業に対して大手にしか投資してこなかった外資系ファンドが、中堅・ベンチャー企業に関心を持っています。さらにプライベート・エクイティ・ファンド(PE)でESG投資を推進する動きが顕著です。PEは一般的に長期に投資し、株式を大量保有して企業の経営陣に直接的な影響を及ぼすケースも少なくありません。企業側からみれば、大株主であるPEがOKならば短期利益を追求することなく中長期での事業展開をはかることが可能になります」

 「上場企業は株主を選べません。どうしても短期利益を追求する投資家を避けることができないのです。未上場ならばPEと良好な関係を築き、二人三脚でESGを推進できる可能性が出てきます。短期では投資リターンにネガティブな影響があるにせよ、社会にとっては意義があり、中長期的にはリターンにプラスをもたらすような戦略や事業を選択することができます」

 

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。