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中堅ベンチャー、ESG資金呼び込む決め手は「PE」 保田隆明・慶応大教授に聞く(上)

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 SDGs(持続可能な開発目標)・ESG(環境・社会・企業統治)への関心は高い。国連が定めるSDGs の17の目標は、気候変動対策やクリーンエネルギー、人権、働きやすさなど多岐にわたるが、各企業がESGに配慮した経営を続ければ多くのSDGsの目標を達成できる。米スタンフォード大などでESGを通じた企業変革を研究してきた保田隆明・慶応大総合政策学部教授は「SDGs・ESGは大手企業だけではなく、中堅・ベンチャー企業の成長に生かすことができる」と説く。

 優秀なZ世代は「大手企業よりSDGs」

 ――SDGs・ESGに関心が集まっています。しかし、脱炭素社会のためのシステム開発や自治体のスマートシティー構想支援など、潤沢な資金を持つ大手企業でなければ無理な取り組みとの印象も受けます。

 「ESG経営で最も重要なのは資本力ではなく、自社の経営戦略にどう落とし込むかです。中堅・ベンチャー企業も人材獲得などで大手と対等に競えるでしょう。今年の就職活動では、環境保護やジェンダー意識などに敏感なZ世代(1990年後半以降に誕生)のSDGs重視の姿勢が目立ちます。先日、内定を受けた大学院生は後輩から『再生可能エネルギーが主役になる時代にどうして石油大手を選んだのですか』と不思議そうに質問され、口ごもっていました」

 「4年生の女子学生は、ゼネコン大手の面接を受けるうちに、質問するのは常に男性社員で女性社員はいつも補佐的な役割であることに気付きました。『働きやすそうな会社ではない』と判断して最終面接の前に志望企業を変えました。知名度や事業規模に関わりなく、中堅・ベンチャー企業もSDGs・ESG経営の方針が明確ならばZ世代の優秀な人材を獲得できるでしょう。今年の就活は大手企業の内定が一巡してから、やっと中堅・中小の出番とはならないかもしれません」

 ――世界で約4000兆円といわれるESG投資資金も注目されます。ただ、企業を具体的に評価するESGスコアが分かりにくいとの声が少なくありません。

 「企業のESGへの取り組みを独自の指標で点数化・格付け化する評価機関は世界に数多く存在し、MSCI、S&P Global、ブルームバーグなど代表的なものだけでも10を超えます。機関投資家はそのESGスコアも考慮して投資先を決定します。

 機関投資家がファンドへの資金供給者である最終投資家に説明するためのプロセスとして欠かせません。ESGスコアは非財務情報を基に作成します。公開された情報を基本とする機関、各企業へのアンケート調査をするものなど手法はさまざまです。最終的には5機関程度に集約されるとみますが、現在は途中段階です」

 ――ESGスコアが高いと株価や業績に好影響を及ぼすと指摘されています。

 「株価に限定してみると、グローバルベースで資金が年々増加している状況で、ESG銘柄として認められると買い需要が入ってきます。ESG投資には、財務・業績情報に基づく株価分析も加えたESGインテグレーション、非ESG銘柄を除外するダイベストメント、投資先に議決行使権を通じて働きかけるエンゲージメントの3種類があります」

 「ただ、アカデミックな研究では、ESGスコアが高い企業は株価や業績が良くなるという関係性と、業績の良い企業はESG対策をする余裕があるため、結果的にスコアが高くなるという逆の因果関係の方向性が議論となるケースが常にあります。国際的に多くの分析が発表されている現在でも、どちらが正しいか(という問題)は解消しきれていません」

 

 

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