日経SDGsフェス

難局でこそ「取り残さない」 行動と共創、加速の時(3) 日経SDGsフォーラムシンポジウム 伊藤邦雄氏対談

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 ロシアによるウクライナ侵攻や収束が見通せない新型コロナウイルス感染症、気候変動問題など社会は多くの困難に直面している。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)達成へ向け、今なすべきことは何か。日本経済新聞社と日経BPは5月10日、オンラインとリアルのハイブリッド方式で「日経SDGsフォーラムシンポジウム」を開催。産官学の識者に加え若き起業家や高校生も登壇し、難局にあっても「誰一人取り残さない」ため行動と共創の加速を訴えた。

日本経済新聞社と日経BPは2022年5月9日~14日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する世界規模イベント「日経SDGsフェス(NIKKEI SDGs FESTIVAL)」を開催いたしました。

※2022年5月10日のプログラム「日経SDGsフェス 日経SDGsフォーラムシンポジウム」から、TCFDコンソーシアム会長/一橋大学CFO教育研究センター長である伊藤邦雄氏と日経ESG発行人である酒井耕一の対談をダイジェスト版でご紹介します。

 対談 無形資産の創造競争の時代へ

 TCFDコンソーシアム会長/一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄 氏

 日経ESG発行人 酒井 耕一

 伊藤氏(以下、敬称略) SDGs、ESG(環境・社会・企業統治)をテコとした社会課題を解決する経営力は無形資産創発力によって決まる。企業は価値を持続的に高めるために、気候変動、人的資本、人権問題への対処など様々なテーマに向き合わなくてはならない。これらの取り組みは今後非財務・非会計情報として開示され、それをもとに投資家、ステークホルダーと対話することになる。

 4月の東証再編ではプライム企業は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の開示が義務付けられた。ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つのカテゴリーが開示のベースだ。TCFDという点で日本は世界のフロントランナーで賛同企業・機関数は最多である。4月の国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、気温上昇を1.5度以内に抑えるには2025年をピークに二酸化炭素(CO2)が減少に転じないと難しいとの発表がなされた。また人的資本の開示は世界の潮流になり、米英の団体も人的資本開示を求めているが、開示のフレームワークはTCFDのカテゴリーをベースとしている。

 日本では20年9月に経済産業省から「人材版伊藤レポート」を公表。また岸田文雄首相が今年中に非財務情報の開示ルールを策定することを掲げ、非財務情報を見える化する会が組成され、私も座長として取り組んでいる。今は人的資本に関する情報開示、可視化を議論している。人的資本経営の実践と開示、両方を進め、人的資本の価値創造を通して企業価値創造に結びつけることが狙いになる。

 昨年発足した自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は自然資本・生物多様性の観点から開示を求める国際的なイニシアチブだ。個々の企業活動が陸、淡水、海、大気にどのような影響を与え、どう取り組んでいるのか情報開示しなくてはならない。さらに人権問題も重要な課題だ。開示された情報の信頼性をどう保証するかという点ではまだ手つかずだ。今後は重要問題になるだろう。

 これから企業経営で重要になるのは無形資産をどう創造し、どう磨き上げるかである。無形資産とは一言で言うと関係性だ。投資家やステークホルダーとの対話で、関係性をいかにロジックとストーリー性を持って表現するか。今後はその表現方法の競争の時代に入っていくだろう。

 酒井 今年はSDGs、ESGで様々な動きがある。“総合格闘技”の力で利益、企業価値、資本効率を上げるのが重要だ。

 伊藤 TCFDも人的資本の開示もどう統合するかが問われている。日本は企業価値創造ができていない、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの上場企業が4~5割。総合格闘技の腕を磨き上げられていないのが現状だ。経済産業政策新機軸部会でも企業価値を創造するにはどうすべきか議論している。

 酒井 日本企業はグローバル化を前提に、輸出するか現地生産するかでやってきた。人権問題、経済状況を含め地域戦略が問われる。カントリーリスクも含め、どう見ているか。

 伊藤 ロシアの軍事力は、基本的には化石燃料に基づいたエネルギーを輸出して得た資金が原資になっている。ロシア・ウクライナ問題の裏にはESG問題もある。この出来事でESGが後退するのか、問われているところだ。防衛産業には投資しない流れがあったが、最近では防衛産業に投資する投資家も現れている。

 酒井 開示と表現力を得るための情報収集や把握力はどう高めるべきか。

 伊藤 例えば人権問題など、サプライチェーンの個別企業を単独で調べるのは難しい。他企業や金融機関などと一緒になり情報把握に努めないと難しいだろう。共創関係をどうつくれるかが問われている。

“世界の知”に学び、SDGsに対する理解を深める
2022年5月開催「日経SDGsフェス」の動画を無料公開

日本経済新聞社の「日経チャンネル」では、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授、日本女性初の国連事務次長である中満泉氏をはじめ、同イベントにご登壇くださった国内外の有識者らによる講演やシンポジウムを動画として無料公開しております。この機会に、ぜひ、ご視聴ください。ご視聴はこちらから

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。